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生きるのryusanのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
4.9
自分が胃ガンである事を知ってしまった市民課の渡辺課長(告知がまだ当たり前でなかった頃の話)。これまで真面目に無気力に生きてきた彼は死の恐怖から逃れるため今まで経験したことのない遊びや体験をしてみるが心の平安は得られない。
そして最後に彼は本当に成すべきことを悟り、捨て置いた公園作りの仕事に最後の短い命をかける。
脚本、構図、演技、歌や音楽や音の効果的な使い方、映画が単なるエンターテイメントを超えた芸術であることを改めて思い出させてくれる名作中の名作。
とにかくストーリー云々の前に一つひとつのシーンに輝きと美しさがある。
静と動、死の闇と生の輝き、主人公の再生の瞬間を誕生日の音楽で祝福して盛り上げといて、いざこれからドラマが始まるという時にあっという間に主人公を殺してしまい、回想と謎解き的に話を進める時間軸の使い方のうまさ。まさに自由自在に観客の心を揺さぶる。まるでボクシングでジャブ、フック・ボディー、左右ストレートの連打でぼこぼこにされる感じ。
感動のヒューマンドラマでありながら、役所の社会問題にもしっかり切り込んでいる。
でもそれを観客自身に考えさせるからまったく押しつけがましくない。すべて計算上の演出。
女子社員が付けた課長のあだ名は「ミイラ」だったけど、今だったら「ゾンビ」でしょうね。


タイムトラベル・映画情報のブログもやってますので宜しく。
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