MasaichiYaguchi

キングメーカー 大統領を作った男のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.8
韓国の第15代大統領・金大中と、その選挙アドバイザー厳昌録をモデルに、2人の相克と決別、選挙の裏側を暴いた実録ドラマを観ていると、理想と現実、正義と闇のコントラストが浮き彫りにされ、実際の結末も苦いものがある。
1961年、韓国東北部の江原道で小さな薬局を営むソ・チャンデは、世の中を変えたいという思いから野党の新民党に所属するキム・ウンボムに肩入れし、ウンボムの選挙事務所を訪ねて、選挙に勝つための戦略を提案する。
その結果、ウンボムは補欠選挙で初当選を果たし、63年の国会議員選挙では地元で対立候補を破り、新進気鋭の議員として注目を集めるようになる。
その後もチャンデは影の参謀として活躍するが、勝利のためには手段を選ばないチャンデに、理想家肌のウンボムは次第に理念の違いを感じるようになっていく。
本作の予告編では、小説家・真山仁さんの「選挙にきれい事は不要! 勝てばいい、勝つしかない! 不正が正義を飲み込む不条理の渦の中で、我々は政治の神髄を見つけられるのか!!」というコメントが印象的に登場するが、確かに選挙に負けたら“ただの人”になってしまう厳しい現実がある。
特に韓国の国政選挙では、負ければ汚職行為を問われて刑務所入りになることもあり、正に“天国と地獄”だ。
そういう“弱肉強食”の世界でも、映画のウンボムは「大事なのはどう勝つかではなく、何のために勝つのかだ」と主張する。
このウンボムという政治家を見ていると、如何に日本には政治家よりも“政治屋”が多いのかと、暗澹たる気分になります。