チッコーネ

キングメーカー 大統領を作った男のチッコーネのレビュー・感想・評価

3.5
金大中と、その飛躍を支えた参謀の物語。
「史実を元にしたフィクション」と前置きされているが、作中に現れるエピソードは、ほぼ事実らしい。
のちに暗殺未遂や拉致の憂き目に遭う、金の波乱に満ちた人生全体を鑑みればまだ序章の段階であり、殺人など最悪の事件が起きることもないが…、選挙戦は駆け引きやネガティヴキャンペーンに満ちた泥沼で、あまりに儚い。
しかし勝利のため手段を選ばぬ手法の数々が、作品全体に活気を与えているのも確かだった。

徐々にグレードアップしていく事務所内で、イデオロギーが声高に論じられる場面には、舞台劇のような開放感あり。
またゆっくりと動くカメラが、クローズアップする役者の背後に複数の側近を映し出す場面が何度か登場、政治に関わる人物の複雑な思惑や人間関係を象徴するようで、カッコ良い。
そして終盤には「見切り発車のまま進んだ共闘」が、決定的な断絶を迎えるさまが、描かれる。
特別な関係を築いた戦友の人間性に抱く本質的な失望の味は…、苦く切ないものだ。

ソル・ギョング×故イ・ソンギュンというキャスティングだが、年齢的にはイ・ソンギュン×若手俳優でも良かった気がする。
とは言えソル・ギョングのバリューと魅力が作品に説得力を与えているのは確か、しかし興行的に失敗した様子。