朝田

ソウルフル・ワールドの朝田のレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
3.9
年末にトンデモない傑作が現れて動揺。個人的には「トイストーリー3」に並ぶピクサーのベスト級作品。人生における「夢」の価値を改めて問い直すというかなり内省的かつ踏み込んだテーマを描きつつも、ポップなデザインによってきちんとエンタメに仕上げるというピクサー(ピート・ドクター)の本領を見た。トレント・レズナーのスコアがまず凄い。彼のたしかな音作りが作品に強度を与える。一番の泣かせ所でもアンビエントめいたメロディーが稀薄でソリッドなトラックを採用しているためどこまでもエレガントな印象が残る。また、中々拾えないタクシー、殺伐とした地下鉄、バーバーショップなどニューヨークの街を丁寧に描写しているのも素晴らしい。こうした丁寧な細部の構築が、魂が主人公というぶっ飛んだ設定に説得力をもたらしている。ピートドクターの演出も非常に上品。主人公が過去を回想するシーンはセリフを一切使わずにモンタージュだけで見せきる。そして、それを踏まえた主人公の表情に全てを語らせる様は映画的としか言い様が無い。また、落ち葉と、それを見つめる表情の関係性によって22号というキャラの心理を完璧に捉えているのも上品。ライティングというか色彩設計も素晴らしく、死後の世界においてもカラフルな色使いによって軽さをキープしているし、ニューヨークの街を捉えたパートではジャズクラブの暗闇や、夜を美しく切り取る。全貌を描きすぎないラストカットも完璧。あらゆる面において作り手の拘り、意志が感じられる超一級のアニメーション作品だと思う。
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