ピート・ドクター監督4作目となる長編映画。今作は完全に大人向けの作品となっており、人は何故生きるのか、何のために生きるのかという哲学的なテーマを正面から描いている。
誰もが人生で何かを成し遂げ、何かを手に入れようと必死に生きている。成功や名声、富を手に入れ自らの夢を叶えることこそが人生のきらめきであり、逆にそれらを手にできなかったとしたらその人生は惨めで意味のないものだと誰もが思っている。
本作は、人生のきらめきとは夢を叶えることや何かを手に入れることではないと優しく諭してくれる。そもそも、夢を叶えられる人間、自分の理想通りの人生を歩める人間などほんの一握りだ…なら市井の人々の人生には全て意味がないのだろうか?
人生の輝きはそこら中に散らばっているが我々は日々の生活に追われ忘れてしまう。夏の朝の匂い、舞い落ちる花びら、空にかかる虹、子どもの頃は何もかもが宝物に見えたのに…忙しなく過ぎる大人達の日々にこの映画は大切なことを思い出させてくれる。