こたつむり

ソウルフル・ワールドのこたつむりのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.5
♪ 永久に続く虹など 
  誰も見向きもしないだろう

地味な第一印象…どころか。
本作の存在自体、気付いていませんでした。
いつ公開していたんでしょうか?というか、フォロワーさんのレビューに「いいね」を押していたのに記憶がない…。自分自身が信じられなくなる…。

でもね。それはそれで良いのかもしれません。
何しろ、本作で語られたのは“自分の人生は自分が生きているだけで良い”という全面的な肯定感。目に染みるような青空、頬を撫でる風、誰かの笑い声…そんなすべてが愛おしく感じる作品なのです。

そして、ガンガンと攻める姿勢はピクサーの持ち味。「スピリチュアル」という単語で片付けたくないほどに“ぶっとんだ”展開は、想像力の持つ無限の可能性を示した結果。いやぁ。好きだなあ。こういう筆致。

しかも、片足は地面についているんですよ。
だからこそ、もう一方の足が宇宙の深遠に向かっていることに感動するわけで。この大きな振れ幅に心が動かずして何に動くのか、と鼻息荒くなるレベルの表現です。

それに嫌味な部分が皆無なのも良し。
一般的に人生を語るとエゴが見え隠れしますけど、本作は“限りなく透明に近いブルー”。主人公が黒人である選択も“物語における必然性”から生まれた結果であり、そこには人種的な配慮なんて一切ないのです。

また、音楽の持つポテンシャルも見事に表現。
正直なところ、ジャズは難しすぎて僕は苦手なんですが(コードから理解しようとすると頭が豆腐になります)そんな自分ですらも“凄さ”は分かりましたからね。実写じゃないことも含めて“凄い”んです。まさに「傑作」と言って過言ではありません。

まあ、そんなわけで。
地味な第一印象を抱いたピクサーの作品は面白い説が未だに有効(あくまでも僕の中では、ですよ)と実証した物語。というか、ステルス機も真っ青なくらいに紛れ込んでいますからね。見つけ出せたら鑑賞するが吉です。
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