るるびっち

ブラック アンド ブルーのるるびっちのレビュー・感想・評価

ブラック アンド ブルー(2019年製作の映画)
3.5
一番の問題は、この話をとてもリアルに感じることだ。
日本の常識で考えたら、不自然なことばかり。
市民が通報しても、スラム街だからすぐに来ない警察。
来たら来たで、通報した店員が黒人なので縛り上げる。
黒人というだけで、ランニングしていると逮捕しようとする。
日本でならあり得なく感じる描写が、全てリアルに見える。
黒人というだけで射殺されるニュースを聞いているので、これが常態なのだろうなと納得する。
汚職警官云々以前に、そもそもこんな街に暮らしていけないだろう。SFのディストピア物みたいに、生き辛く狂っている。
これがリアルなら、生き抜く自信など湧かない。
全身脱色してでも白人になるか、亡命するよ。

映画の主人公というのは、孤立した方が面白い。
黒人・警官・女性という三拍子揃ってマイノリティの立場に立たされていて、警官からも黒人からも孤立する主人公。
ただ彼女には軍隊経験があるので、機敏な行動と判断力で危機をすり抜けて行く。
『舐めてた相手が殺人マシーン』だったというタイプの映画があるが、今まではランボーもイコライザーもジョン・ウィックも男性キャラだった。今回は殺人マシ―ンではないが、元軍人なので警官たちは手こずるのだ。
『舐め〇〇』これからは、このパターンに女性が参入するだろう。
見くびったホームレスのおばさんに、皆殺しにされるギャングとか出てきそうだ。メリル・ストリープ辺りがやったら、リーアム・ニーソンみたいに演技派からアクションスターに晩年に転向して面白い。

ひとつ問題なのは、逆転の切り札である汚職警官の犯行を撮った動画をぬくぬくと保持していることだ。
観客は最終的に、それで逆転勝利できると思うので絶望を感じない。そこがサスペンスとして弱い。イザとなればネットに流せば良いのだ。

ちゃんと撮れてなかったとか、悪徳警官に一旦奪われ取り返さないといけないとか、もっと主人公を絶望の淵に追い込まなければいけない。
ポーカーで、強いカードを持っていないのにハッタリをかます。
いわゆるブラフをかける手もある。
不完全な動画を元に犯人たちと取引をする。
映っていないことがいつバレるかハラハラしながら見せられるし、更にバレてどん底になるが、実はそれこそが観客も予期しなかった主人公の狙いで、油断した犯人たちの証言をとれたり、一気に片付ける秘策が裏にあったなど。
その捻りがあれば、もっと惹きつけられて面白くなっただろう。
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