いの

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェストのいののレビュー・感想・評価

5.0
私は、邦題「ウエスタン」のレビューで、この映画は、風に刻まれた文字のような映画だ、と書いた。それはいつものように、ただの直感で思い込みに過ぎないワケだけれど、今夜、最後に、タイトル「Once ~」の文字がくるくるっと回転しながら空に舞い上がり消えていった時、やっぱり私にとっては、そういう映画なんだと思った。(始まりの、踏切が降りるようなセルジオ・レオーネのクレジットも大好き)


時間は前に一直線に進むのではなく、きっとくるくると回転しながら前に進むのだと思う。蒸気機関車の車輪が、回転しながら前進していくように。過去への想いを、燃料にして。流した涙を、煙突から吹き出させて。銃声を、汽笛にして。ハーモニカを、見果てぬ夢にのせて。虫の音も、風の音も、きしむ音も、心の中に刻まれていく。風の歌を聴け。滅んでゆく西部の男たちは、永遠になる。永遠に、生き続ける。


これからも繰り返し観ていくのだろうと思う。そのたび新たな発見があり、何度でも出逢う。あの男の人、顔面についてるマーマレードジャムもバッチリ見えたよ。カメラが這い上がると見えてくる、敷き詰めた枕木(でいいのかな?)に圧倒される。こちら側からのカメラが、壁や屋根を這い上がると見えてくる、広々とした風景に、馬車で駆けるジル。
紅一点でありながら、心情を台詞では語らず、正論も吐かないジルは、この映画のなかの男たちが、求めてやまない女性なのだと思った。男たちにとっての終着駅であり、また、終着できない男たちにとっては、ジルも見果てぬ夢なのかもしれない。ジルにはなれそうもないから、次にうまれたらダスターコートの似合う男になろうという野望を、私はまだ捨てられないでいる。





(過去レビュー)
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