Taka

愛なき森で叫べのTakaのレビュー・感想・評価

愛なき森で叫べ(2019年製作の映画)
4.2
園子温監督らしい描写を詰め込んだベストアルバム的な内容に見えて、終着地点に行けば行くほど新境地へと向かっていく。これが面白いかどうかは自分の中でも未だに処理できてない。‬
‪‪「自殺サークル」、「紀子の食卓」、「愛のむきだし」、「冷たい熱帯魚」、「地獄でなぜ悪い」、連想すればいくらでもあると言える園子温作品と思わせる描写の数々、これまで花を添える存在とずっと思ってきたが、序盤から独特な凶気を出していき、見事に華となって咲き乱れる椎名桔平に対して、徐々に凶気を見せ始めて最後は椎名桔平を追い詰めていく満島慎之介などなど151分に詰め込まれた内容についてはしっかりと面白かったことは評価したい。
本作での満島慎之介のモデルは園子温と聞いて鑑賞していたのだが、どうも見ていくうちにその感触は自分の想像とはおかしな方向性を見せ始める。この映画は北九州監禁殺人事件と園子温が出会うif世界を描き、自己探求を示した作品であるという側面を見せている。それが最終的には椎名桔平と満島慎之介が対極するクライマックスへと持ち運ばれる。
こういった内容から正直、傑作と言えるかを回答するにはしばらく時間が欲しいと言いたくなる作品ではあった。もっと北九州監禁殺人事件に触れてくるのか(もちろんグロテスクはしっかりとある)とも思ってしまったので少々拍子抜けした部分を感じたからだ。
面白いのか、これでいいのか。ただ、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でタランティーノがハリウッドのif世界を提示した2019年に日本のNETFLIXで園子温監督が自分のif世界を作ったのは面白いと自分は思う。
‪映画と現実、現実と虚構が崩れ去り、出会う151分に我々は何を感じ、何を思うだろうか。
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