はるな

ガリーボーイのはるなのネタバレレビュー・内容・結末

ガリーボーイ(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

GULLY=イギリス若者のスラングで「暗いストリート」の意。本文では「路地裏」と訳されていた。

主人公のムラドは、まさにそんなGULLYに暮らす大学生。最低限の設備だけがある狭くて暗い家に、母と弟、祖母と父、それに加えて後妻(イスラム教なので重婚可能)までもが集まって生活している。

母は父に召使いのように扱われ、家は地獄の様相。抜け出そうともがく友人は犯罪に手を染める。使用人の子は使用人にしかなれないという社会の常識。それらすべてが、ムラドから希望を奪っていた。

そんなとき、大学のお祭りで、ヤジをものともせず、むしろ自分の音楽に活用してしまうラッパー・DJシェールと出会う。
この物語は、そこからムラドがラップを通して「自分に価値はある」と言い切れるようになるまでの姿を描いたサクセス・ストーリーだ。

おそらく、根幹にあるのは格差に対する問題提起と、貧困にあえぐ人達に向けた力強いエール。

ネット環境もない、衣食住すらままならないムラドと、医大生でiPadを持っている彼女の対比や。スラムツーリズムに来て人の家を好奇に満ちた目で見る欧米の富裕層、年は同じくらいなのに、自宅の居間ほど広い風呂…など、ムラドの目から見た格差がこれでもかと描かれる。

「誰か救って格差という虚無
この世の物語誰が糸を持つ」

という歌詞がすべてを物語っていた。

しかしそこはインド映画。こちらの期待を裏切らない超気持ちいい展開が待っている。ラップを通して自信を身につけていくムラド。そこには生まれや資産なんて関係ない。

最終的に、抑圧的な父親に、ラップバトルで鍛えた「自己肯定跳ね返し力」で「俺には価値がある!」「現実を見ろと親父は言うけど、俺はその現実を変えてやる!」「この状況から抜け出せない、というのは単なる親父の思い込み」と言ってのける。

このシーン、最高に気持ち良かったなぁ〜!
自分の現状を呪うすべての人への、監督から(脚本家から?)のエールだと感じたよ。

罵り合うラップ、怖いものって印象が強かったけど、お互いの自己肯定感バトルみたいなものなんだなって思った。もしかしたら今の私に一番必要なものかもしれない。

ほかの口コミ見てたら、サフィナ(ムラドの彼女)苦手!って意見がちらほらあったけど、私はとても好きだった。サフィナと見合いして「ムラドに連絡しなかったらお前と結婚する」とおどされたムラド友が、「あいつと結婚したくないから連絡してくれよ〜」とムラドに泣きつくシーンは思わず爆笑してしまった。笑

ちなみに、私はラップがそんなに好きではないので、劇中音楽も好きじゃないかな〜とか思ってましたが、普通に優しい曲とかインドっぽい陽気な曲とかあってそれも良かった。
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