YAEPIN

ガリーボーイのYAEPINのレビュー・感想・評価

ガリーボーイ(2018年製作の映画)
4.7
Filmarks試写会に参加させていただき鑑賞した。

初めて「踊らない」インド映画を観たかもしれない。少なくとも踊りとしての踊りはない。インド映画の象徴とも言うべきそこ抜けた明るいミュージカルシーンは、この映画ではラップのMV撮影という大義名分を与えられる。あるいは自らのどん底の現状に鬱屈した主人公が、雇い主の車で1人でラップを吐き出すという形で、主人公の心情を痛いまでに切実に表す機能を担う。
主人公に感情移入させると共に、ヒップホップというジャンルのエネルギーとその源を、はっきりと観客に知らしめた。

また、試写会後の松岡環氏の講演を聴き、この映画で描かれるキャラクターの複雑さも感じた。主人公ムラドは犯罪に手を染めつつ子供の関与を嫌う。彼女のサフィナはお嬢さんのくせに暴力的で最高だし、主人公の父親は学歴もあり安定した収入もある暮らしとは無縁のラッパーという人生に猛反対しつつ、ステージの上で照らされる息子を安堵と羨望の眼差しで見つめる。この父親のまさかの二面性には驚かされたし、切実なまでの人間性を感じた。インド映画ではお馴染みの、気持ちいいくらい単純な善悪の二項対立的な構造とは、一線を画していた。
挙げだしたらキリがないくらい、出てくるキャラクターすべてが複雑な内面性を持ち、ヒューマンドラマとして非常に見応えがあったし、2時間半は納得のいく時間だった。
ただ一人、先輩ラッパーのシェールだけがやや理想化されすぎてるかな?とは思った。
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