ラップ、ヒップホップ、格差、『ムービーウォッチマン』関連とくると、どうしてもプライオリティ高くなる。休日出勤の前にちょい見してきました。割引皆無の1900円の重みを感じつつ‥。
インドでイスラム教徒がどう捉えられているかわからないが、主人公ムラドはそんなムスリムスラム住まいの青年。大学には通っているが、身分制度の厳しいインド、未来に希望は薄い。それでも上流階級の医学生、サフィナと付き合っており、薄く将来を夢みてもいる。そんな彼が偶然大学でラッパー、シェールに出会い、彼との交流を通じて、ラップにのめり込み、また自分の道を探してゆく、というわかりやすいストーリー。
ヒップホップの本場とは言い難いインドを舞台にしつつも、今作で登場する音やラップはなかなかのもの。っていうより、ふつうに良い。トラックはベーシックだけど、ラップについてはかなり堂に入っているし、リリックの内容も個性的で良い。特にムラドが初めて作り、バトルの決勝戦で披露した、自らの出自を綴った曲にはグッとくるものがある。
ムラドを取り巻く人々もみな、それぞれに魅力的。正直正気じゃないよな、と思いつつ、そのアグレッシブな美しさに惹かれるサフィナ、不思議なほど寛容で優しい先輩ラッパーのシェール、ムラドの支援者となる裕福な女性、スカイ(ムラドとのコラボ作での歌声が、フレンチポップ〜R&B的で素晴らしく魅惑的)だけでなく、スラムの悪友たちも含め。なので、生活のためとはいえ、あれだけの悪行の手助けをしながら、お縄を逃れたムラド自身については、正直最後まで疑問は残らないわけではない。
とは言え、ムラドのわかりやすいサクセスストーリーというだけでなく、インドならではの男女間の不公平な関係性、親子の葛藤、インドの社会制度への疑問提議的な意味合いなど、さまざまなテーマを含んだ作品。世界標準ならあと20〜30分は短くできたとは思え、余分なシーンは多々あれど、後半ジーンと感動させられたのは確か。