トッキー

ガリーボーイのトッキーのネタバレレビュー・内容・結末

ガリーボーイ(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

インドの実在のラッパーの半生を基に、ムンバイのスラム街に住む青年がラッパーとして成長する様を描いた青春映画。

主人公のムラドはラップを愛する青年。
しかしムラドの父は母に高圧的な態度を取り、さらに家に若い第二夫人を勝手に招き入れ、家庭環境は悪化するばかり。
またムラドの彼女である医学生のサティナとも、身分の違う彼女の厳しい両親の目もあり、こっそりと会うのを繰り返す日々。

そんな中ムラドは、大学祭でラップを披露するMCシェールと出会い、自身の書いた歌詞でラップを始める事になる。
ガリーボーイと言う名を付けられ、ラッパーとして着実に成長をする中で、有名ラッパーNasがムンバイ公演を開き、さらにラップバトルコンテストで優勝した者はNasのステージに前座として立つ権利を与えられると知り、MCシェールと共に特訓を始める。
と言うのが、大まかな物語。

特に印象的だったシーンは、
ある日、金持ち相手に運転手をしている父が怪我を負い、ムラドが家計の為に代打を務める事になり、変わらない生活、理不尽な社会、家族の問題、様々なしがらみに苦しみ、1人車の中で「俺の時代が来る」とボソッと呟くシーン。
地味なシーンではあるが、ここは一番鳥肌立った。

また本編を通して、根っからの悪人が殆ど登場しないのも良い。
序盤で共に車を盗んでいて何度か衝突する悪友も、そしてムラドの音楽を否定し、「俺たちは上を向いて生きてちゃいけない」と叱責した父親も、貧困や、格差社会の中で暮らす事でそうなってしまったのであり、そう言った周囲の人間とムラドの関係にもきちんとした落とし所がある。

ラストでNasの前座としてステージに立つムラド。
客席には彼女であるサティナ、友人、母親、兄弟、そして父親の姿もあった。
多少の御都合主義感は否めないが、ヒップホップの歴史とは切って離せない関係である貧困と言うテーマを暗く描くだけでなく、明確に希望のある形で終わらせる感動的なラストだった。

インド映画、そして音楽映画の歴史に残る傑作。
トッキー

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