キョン太

ガリーボーイのキョン太のレビュー・感想・評価

ガリーボーイ(2018年製作の映画)
4.2
素晴らしい。

ラッパーが主人公の物語は、持たざる者がマイク一本、身一つで成り上がるものなので、話の流れ自体は見たことがある。
けれど、インドが舞台になって、この混沌は他にないものだなと思う。
ヒップホップも、西洋との行き来もある。みんなスマホを持っているし、当たり前のようにSNSも使う。
だけど足元には地面を覆うゴミの山。部屋の区切りのない家に、結婚したんだかわからない第2夫人がいたり、人々がひしめき合うスラムでの暮らし、抜け出そうと努力はしても、身の丈に合わない夢など見る価値もないものにされ、身分制度の呪縛も強く残ったまま。

変わりたくとも変わりきれない鎖だらけの街で、自分の信じる道を歩くと決めたムラドの眼差しの強さが、本当に美しい。

両親や親族との関係とか、友人たちとの絆、めんどくさいけど可愛い彼女と、夢への道を共に歩いた仲間たち。
周囲との関係の描き方も良くて、ラップになんだかんだちょいちょいインド味が混じっているのも面白かった。
ラストも清々しくて、あ、インドの電車ってドアないのねーってなる。

最後のステージ、なんか涙が出ちゃった。
とても良い映画でした。
キョン太

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