Bluegene

グッドライアー 偽りのゲームのBluegeneのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

これはめちゃめちゃ後味の悪い映画だった。

ロイが詐欺師なのは冒頭で描かれるので詐欺師がカモられる話というのはすぐに見当がつく。ロイがベルリン行きを嫌がるあたりで、これは訳ありだなーひょっとして戦犯とナチ・ハンター?と思ったが、ハズレだった。そういうのもうテンプレすぎるのかなw 確かに死んだ英国人になりすましたドイツ人だったが、年齢からすると戦場に出たかどうかも怪しい。戦後に英語力を買われて連合軍の通訳をしていただけだった。

このあたりからベティは老人をカモにする同業者ではなく、何かしら私怨があるのだろうと見当がついてくる。ありそうなのはロイにカモられた被害者の身内かなんかか?と。

が、結局彼女もドイツ人で、少年時代のロイに辱められ、父親を密告されて一家が破滅したことの復讐だったのがわかる。でもロイ=ハンスが生きてロンドンで詐欺師をやってるとなぜ知ったのか、復讐を思い立ったきっかけが何か、というとこを映画からうまく読み取れなかったので、盛大な疑問符が。

まあ絵を見てロイがリリーと言った時に「いやそれカラーだし」て突っ込みたくなったのは置いといても、「リリー?…だれ?」て思ったのは私だけ?おとぎ話読んでて「あのとき助けてもらったスズメです」てスズメが登場した時に、「いやこの主人公いつスズメ助けたん?」てびっくりするような展開だったんですが。

どんでん返しを意識するあまり伏線を張らなすぎて、最後の対決シーンがベティによる説明になってしまったのはそもそも映画としていかがなものか。それに見終わった直後は「まあロイっていうかハンス卑劣なやつだったしな」と思ったんだが、つらつら考えるとハンスの罪ってベティ=リリーのレイプ以外なくね?

⑴リリーのレイプ
これは一方的にハンスが悪い。が、ハンスと一家の関係、姉娘たちのいじめ、リリーとハンスの関係が一方的にベティから語られるだけなので、は?そこでいきなりレイプ?てなった。

⑵リリーのパパンの逮捕
これ、ハンスがチラ見した会合が密告のネタだったんだろうけど、何を話してたのかちゃんと聞いてなかったので疑問が残ったままなんだよね。そこらへんのパン屋ならいざ知らず、政権とかなり関係の深そうな裕福な実業家が、匿名の密告ひとつで翌日にいきなり逮捕処刑とは考えにくい。ナチ政権に反対して処刑されたなら戦後に名誉回復されただろうし、そういうんじゃなく、横流しかなんかで捕まったならハンスを恨むのは筋違いと思うわけよ。そのパパンの工場ではたくさんのユダヤ人やレジスタンスが奴隷労働させられてたわけで、それをさらに私腹を肥やすのに使ったとか論外なやつじゃん。

⑶ママンが自殺した
これも「もう贅沢できなくなっちゃった」という絶望がきっかけなら、夫の工場ではたくさんのユダヤ人や以下略。

⑷両親が死んで困窮したうえ、爆撃で姉妹が死んでしまった
これはもはや戦時中なので…としか。ハンス関係なくね?それに姉妹はみんなキッチンで下宿人のために働いてたのに、自分だけ寝室で寝てたのかよ?

⑸ソ連軍が来てえらい目にあった
もうそれハンス関係ないw パパンが生きてても資本家はソ連の体制下ではただではすまなかったから。もし金にモノを言わせて西側に脱出できたのに、ということなら、自分さえよければいい利己主義の塊ってことですわな。

本来なら詐欺師が報復されて大団円なはずなのに、ベティの復讐に正当性が見出せないからすっきりしないんだよね。ロイも卑劣なクズだけど、ベティはクズよりゲスい女にしか見えない。しかも製作側がどこまでそれを意識してこのベティというキャラクターを作ったのか分からないので、考えれば考えるほど困惑しか残らない映画だった。
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