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死刑台のエレベーターのpikaのレビュー・感想・評価

死刑台のエレベーター(1958年製作の映画)
4.5
初ルイ・マル。
ジャンヌ・モローが夜の街を無表情で闊歩してるだけで何故こんなにも魅せられるのか!
最初なんだこれ、ベタベタなサスペンスやんけと思って見ていると静かに静かに増していく緊迫感。美しい夜の街並みとトランペットの旋律に酔いしれながらいつの間にやらすっかり世界観の虜になり、クライマックスでは残り時間を秒読みしながら先がどうなるのかとドキドキハラハラ。

いい意味で全く抑揚を付けず鮮やかなモノクロ(BSプレミアムで画質抜群)の映像美を丁寧に堪能し、ひとつひとつ綺麗に絡まった糸が静かにほどけてゆく様に極上の映画体験を味わう。

愛と表裏一体であると言わんばかりに人間の身勝手さや愚かさを物語の影から炙り出し、犯罪の罪深さよりも愛が勝ると共感させてしまう叙情性が凄い。
映画を構成する全てが一身に「観客の主観を奪う」ことに終始し、虚構だし他人事であるはずなのに映画へ没頭し、理性さえも奪われてしまう演出力に圧倒された。
これぞ映画の力と言うべき面白さだった。最高!
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