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死刑台のエレベーターのtakのレビュー・感想・評価

死刑台のエレベーター(1958年製作の映画)
4.2
劇場で観るチャンスがあり、久しぶりに鑑賞。初めてこの「死刑台のエレベーター」を観たのはかれこれ20数年前。熊本市のセンターシネマだった。ルイ・マル監督の第2作「恋人たち」と2本立て。サスペンス映画とメロドラマ。作風のギャップにも驚いたが、何よりも緊張感と説得力のある90分の濃密さに圧倒された。上映時間が長い映画はそれだけ観客を引っ張る仕掛けが必要だ。短い時間で納得させられる映画を好むようになったのは、もしかしたらこれがきっかけかもしれない。

初めて観たときは、マイルス・デイビスのトランペットが響くクールなサスペンス映画ということに感動した。しかしあれこれ映画を観てきた今の年齢で改めて観ると、雨に濡れて街をさまようジャンヌ・モローに共感している自分に気づいた。

あの頃、この映画のジャンヌ・モローに、思い詰めた女性の怖さを感じていた。しかし、それは恋に身を焦がした故の人間の姿。男も女もない。それは殺人に手を染めてしまうモーリス・ロネも同じだ。映画を見直すことはあの頃とは違った気づきがある。

現像している写真に愛し合う二人の姿が浮かび上がるラスト。この後渋さを増していくリノ・ヴァンチュラが演ずる刑事が「カメラはまずかったですな。」と言う。自分たちの秘密の逢い引きを写真に撮るのは、冷静に考えれば軽はずみな行為。初めて観た頃、僕はこの結末を「すげぇ」と思いながらも、誰かに自分たちの幸せな姿を撮らせるっておかしい・・・と不思議に思っていた。

でも今観ると思うのだ。誰かに撮ってもらって逢い引きの証拠が残ったとしても、その愛し合う瞬間を焼き付けたかったんじゃないか・・・って。これは愛の映画なのだ。そう考えると、あの頃第2作「恋人たち」に作風のギャップを感じたけれど、実は同じ愛の映画なのだ。

北九州映画サークル協議会例会@イオンシネマ戸畑(2011)
センターシネマ(熊本市・1988)
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