きょっぺ

アルプススタンドのはしの方のきょっぺのレビュー・感想・評価

5.0
今年1位来ましたわ


まずシンプルに僕は野球がそんなに好きじゃありません
そして今作で初めて野球で泣きました
なんなら野球がちょっと好きになりました



評判は聞いていたので、「これはスタンドの端の方にいる俺たちの映画だ!見るしかねえ!」と思って見に行ったらあらゆる面で穿った見方をしていたこっちの価値観を逆転させてくるえげつない覚醒コンテンツでした
傑作です


最初の方は野球をバカにした会話をしている演劇部の二人を見ていて「そうだよな野球なんてくだらねえよなわかる」って思ってて、アホみたいな典型的な熱血先生が出てきてそれもバカにして見てたりして
あんま話したことない女子と以外に仲良く話せてるの羨ましいぞとか
とにかく居心地が良かったわけです
それが中盤手前くらいから「おや、これはもしかしたら居心地が良い映画ではないのかもしれんぞ」と思うようになってきて
吹奏楽部部長が帰宅部女子に心の叫びをぶつけたあたりから「俺はなんてことをしてしまったんだ」となって
そこからはもう完全にあの4人組と同じ感情ですよ
全員が全員、自分が間違ってたことに気付いてむき出しの感情を叩きつけていくもんだからこれが青春じゃなくてなんだってんだよ
帰宅部女子が吹奏楽部部長に叫ぶシーンで泣きましたわ


全然まとまんねえよ
なんだよこれ


まさかのグラウンドを一切見せない話運びとか
後出しジャンケンじゃなく全ての会話とか視線とか仕草がちゃんと伏線になってて、なんなら後でそれに気付くとか
端っこにいるピントが合わされていないキャラの細かい動きとかがめちゃくちゃ重要だったり
最終的に登場人物全員を救い上げる愛のある人間賛歌だったりと
監督の手腕は拍手ものです

今の僕でもたぶんグラウンドのヤツらを応援できる心の余裕はないんだけど、なんならアルプススタンドにすらいない可能性はあるけど、素直な心で応援できていた世界線ももしかしたらあったんじゃないかなみたいな、もう1人の自分がいたらこうだろうなって考えたらめちゃくちゃ号泣しましたね


さらにいえばこのコロナ禍においてどうしようもないとかしょうがないとか考えざるを得ない現状に対してのアンサー映画にもなってて今見る価値しかないです


大傑作
しかも75分しかない
濃密すぎて時間とかなんも考えてなかった
きょっぺ

きょっぺ