tetsu0615

アルプススタンドのはしの方のtetsu0615のネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

いやーなんだろ良いもん見たな…そんな感じの映画

スタンドの端で試合を見ていた彼らに徐々に伝わる、選手や観客席の応援の熱。その熱が彼らの心を動かし見ている我々にも熱が伝わってくる青春映画の新たな傑作
汗をかき走っているまさしく"青春"をしている彼らは画面に映らないのに、台詞や音楽で選手たちの熱が伝わり、初めはウザいテンションな先生の熱、その一つ一つが届いていき、端に居る彼らと共に"がんばれー!"と声を届けたくなったと同時に端で座っていた彼ら(冒頭で「青春ってなんだろ?」と言っていた)の"青春"に拍手を送りたくなる。

自分の高校時代-よくイメージされるようなキラキラとした青春では無かった-を思いだしその一つ一つの青春を愛おしく感じつつ、"しょうがない"という言葉で色んなことから目を背けていた過去を思いだしつつ、新たに前向きな気持ちにしてくれるような作品だなと。

今は難しいかもしれないが、応援上映とかあったら絶対劇場が「がんばれーー!!」で包まれそうな作品だ。

冒頭のセリフが後々回収されていく(青春ってなんだろ、送りバント、矢野くんなどなど)様も鮮やかで、クスリと笑える会話のやり取りも面白い。
応援席の厚木先生のウザそうなテンションは登場時には思わず笑ってしまったが、彼が持つ熱量が次第に4人に伝播していく頃にはスッカリ受け入れられていたのも良かった。

前述の通り、些細な会話が後々に伏線のように回収されたり、その会話の中にそれぞれのキャラクターや心に秘める想いが滲み出され、各々の表情や立ったり座ったり移動したりといった行動に表れていたりするなど、場面としてはスタンドだけなのに色んな事が交錯する感じがこれまた良い。
安田と田宮のちょっと気まずそうな関係だったり、彼ら4人が並ぶまでの思いの交錯…それがちょっとずつ動いていく様を自然に見せているのが素晴らしい。
黒豆茶のくだりや進研ゼミのくだりには普通にニヤニヤと笑ってしまったし、久住さんが見せる「明るい側にいると思われてる人の悩み」的なセリフも良かった。
物語が進むにつれ、試合が進むにつれて彼らが抱える想いが露になってくる。どこか諦めたような、冷めてしまったような心の内が試合が熱を帯びていくのと同時に彼らにも変化をもたらしていく。

彼ら4人が横並びで応援の声を張り上げている時にはもう自分も「頑張れ!」と選手を思っていた。上手く言葉にならないけど熱量が伝わってきてちょっとウルっとするくらいに。
姿は映らないけど、園田も矢野も頑張ってるんだと想像出来た。それをセリフだけで見せるというのは改めてスゴい(田宮さんの説明がちょっとわざとらしすぎる部分も少しは感じたけどね)

「しょうがない」このセリフが何度も繰り返される。それを断ち切る宮下さんのセリフから熱を帯びて、彼らは想いを声に乗せる。詰まっていた想いやわだかまりが少しだけ溶けて、声援に熱がこもってくる。そんな彼らもまさしく"青春の一ページ"をこの日に刻んでいるのだ。その様はアルプススタンドの端でもか輝いていた-エピローグでは社会人になった彼らが描かれる。もちろんスタンドの端の方で、彼ら4人が集まる。その視線の先にはー

見終わった後、非常に爽やかな気持ちで劇場を後にすることが出来た素晴らしい作品だと感じました。
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