千里

アルプススタンドのはしの方の千里のネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

トレイラーを観て観に行く候補に入れつつも、他に見たい作品が沢山あったのでスルー予定だったが、世間の高評と「桐島、部活やめるってよ」「のぼる小寺さん」と似たタイプの作品だということを聞いて気になり観賞。確かに2作と似ているテーマだったし、世間の高評も納得の出来栄え。ほぼほぼ野球観戦のスタンドの端の方のみを舞台として物語を繰り広げてここまで面白くしているところが特に評判の凄いところなのではなかろうか。

どんなに好きなことでも努力しても無駄だと分かったのなら、しょうがないから他のことに時間を使った方が有意義という意見も分かる。でも無駄だと思った努力でも思わぬ形で役に立ったり、実ることもあるかもしれない。そんな世の中であって欲しいし、そもそも頑張ってる人の努力を他人が無駄だと言ってしまうのが一番かっこ悪いなって。

個人的な意見としては本作の結論と同じ意見ではあるのだけど、ただそこへの持って行き方にはちょっと違和感を感じてしまった。その理由として、物語の舞台がほとんどスタンドの端の方なところは凄いと思う一方、物語を動かすのは台詞しかないので、物語的な動きに面白さを感じるタイプの自分みたいな人には物足りなさを感じてしまうかもしれないのではないかと思った。本作の結論づけまでの流れは不自然というわけではないが、台詞のみで物語を動かさなくてはならないので、そこに力を入れ過ぎてメッセージ性を押し付けられてるような感覚を感じてしまったのが原因なのかなと。

故にあくまで個人的にだが、一見いつも楽しそうなスクールカーストの頂点の人たちに対して、好きなことを持っているスクールカースト底辺の人たちの方が実は幸せなのでは?という対比構造と絶妙なストーリーテリングで魅せた「桐島、部活やめるってよ」や、小寺さんという絶対的な魅力の塊に感化されて自然と好きなことに夢中になっていく登場人物たちを描いた「のぼる小寺さん」と比べると一歩物足りなさは否めないかなと。

とはいえ、野球に興味のない自分ですら終盤の応援には熱くなったりも出来た本作も十分過ぎるほどの良作だった。
千里

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