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アルプススタンドのはしの方のtomharakのレビュー・感想・評価

4.6
試合中の甲子園、グラウンド自体は全く画に映さずスタンドの端っこに座る冴えない、所謂スポットの当たらない、大多数の人間の投影、である四人の生徒の会話で進んでく…というアイデア一発に留まらない、練り上げられた脚本と演出による新たな青春映画の傑作かと思いました。

そんだけで映画として「もつのか?」って話ですが、ピンク映画出身の監督だけあり、崇高さを感じるレベルで夏の陽射しの元の女の子たちを魅力的に映しつつ(宮下さん、の文字通り透き通るような白肌、汗…!)、的確なリズムの編集、リアルな会話が齎す笑いと緊張、などなどにより全く退屈させない、というかどんどん熱を帯びめちゃくちゃ盛り上がって行く(としてもランニングタイムは75分、ここらが適度か)。キャメラの外を否が応でも想像させる映画的な正しさ。

それぞれの登場人物、主軸の四人以外のキャラクターも含め、お話のはじめとおわりでかなり印象が変わっていく。試合の時間を通し、変化と成長が物凄く丁寧に描かれている。(四人の立ち位置、座る距離感の変化にもニヤニヤしてしまう…!)

その他細かい細かい演出も見事過ぎて、観てて多幸感がありましたし、何でもないシーンで涙が溢れてくるくらいでした。

今年観た中でもいまんとこトップクラスの素晴らしい映画でした。

※田宮さんと宮下さん、『割とすき』のくだりで滂沱の涙が出た。
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