アルプススタンドのはしの方(2020)
まだ季節が毎日暑かった頃「やたらに称賛コメントに溢れ返る映画がやっているな」と思っていた
それがこの『アルプススタンドのはしの方(2020)』だった
今回ふと思い出してタイミングが合ったので映画を鑑賞することにした
観るまでメインビジュアルしか見たことなく一切のあらすじも調べてもいなかった
ストーリーを振り返ってみると
>夏の甲子園1回戦に出場している母校の応援のためアルプススタンドに集まった、演劇大会に出られなかった2人の女性演劇部員・成績の低い元野球部員・成績優秀な帰宅部女子の4人
映画はアルプススタンドのはしの方(ほぼワンシチュエーション)での会話劇がひたすら続く
このストーリーは元々高校演劇の戯曲というのも舞台挨拶で初めて知った
アルプススタンドに映し出される立ち位置(はしの方)とスポットライトに当たらない人間達(陰キャ)がフィールドの中で真正面から強い相手に立ち向かっている野球部員(1度も画面に映ることはない)に感化されネガティブな思想からポジティブ思考へと切り替わる
陰キャも陰キャでそれなりの青春だし
フィールドで戦う選手達も青春そのもの
ヒエラルキーも描いていて
『桐島、部活やめるってよ(2012)』
を思い起こさせた
私はこの映画を観て
グランドに立ってプレーすることこそ善
プレーできなければ意味はなく
ベンチやアルプススタンドは論外なスタンス
目の前まで来た目標に辿りつけず
目的を失った人間は諦めることが善
みたいな
とにかく白か黒の帰結しかなく
強力な無力感に苛まれ悟ったように「仕方がない」という言葉に占められている
「仕方がない」先に
どういう行動を起こすか
新たに立ち上がるのか腐るのか
そもそも自分の思い通りに行くことこそ少なく自分の気持ちに折り合いをつけながら生きていくことが大切なはずなのに
沢山の価値観を受容しない精神的に未熟な考えに支配されたティーンネイジャーの一末の映画だな
と冷めた目で途中まで観ていた
うだつの上がらないネガティブな感情を描いて それぞれの人間模様や背景をクロスさせていく
ベンチに座る位置を多々変化させ
登場人物を一旦引かせて再登場させたり
これはまさに舞台芸術そのものの手法
本当の意味でストーリーのキーとなるのは
4人のメインキャラクターではなく
茶道部の男性顧問が担っている
リリーフ登板するように
メインキャラクターの切実さ・妬み・葛藤を正面から捉えて グランドの選手を応援する姿を通して
「それでも頑張っている」
「向こうは向こうで頑張っている」
という要所要所でシメて
4人の背中を押していくのが
後からジワジワ効いてくる
例えるなら "松岡修造" みたいなキャラ
馬鹿みたいにストレートに大声でしかも腹から声を出さず喉を潰して応援している
ホントはグランドの中で応援したいのに
敢えてその気持ちを前面に出さず一体感や連帯感で選手の背中を押し続ける姿に4人は突き動かされていく
青春模様を描くにはエッセンスとして
必須のキャラだと思う
スポットライトがあたる・あたらないに関わらず人生観は沢山あって色々な角度から物事を捉えたり探したりして成長していく
というメッセージにポップさを忘れず組み合わせ緩急のつけ具合がとても上手い
一方でかなり冷静に捉えると
負の感情を持つ人が陽の感情に飲み込まれたとも思えなくないけど…
生きていく上で自分なりの考えを持って相手と向き合いながら生きることもメッセージとして組み込んでいる
確かに万人受けする青春のお手本映画だと思った