やすやす

その瞬間、僕は泣きたくなった CINEMA FIGHTERS projectのやすやすのレビュー・感想・評価

4.0
5つのショートムービーの中で一番心に響いたのは
2番目に流れた「魔女に焦がれて」でした。
学校で魔女と呼ばれた一人の女子高生がいました。
彼女は他人が悩んでいる心情を見抜く特殊な能力を
宿しています。その噂はすぐに広まりクラスメイト
の女子生徒からの恋や進路の相談に次々と答えてい
く事になります。
「好きな男子にいつ告白すればいいのか?」
もはやただの神頼み。神社の祈願と一緒、彼女はパ
ワースポット。成績優秀で早々に推薦入学を決めた
ことも一目置かれる要因です。
ところがその能力が突如失われる。彼女のアドバイ
スは失敗が続き非難の的となってしまう。
なぜ能力が失われたのか。彼女は人助けをしている
ようで人の心を支配しているとも解釈できます。そ
んなことは許さないという亡き母や神様の啓示でし
ょうか…
効力が無くなったと分かったらいじめとも思える嫌
がらせを受けて孤立するようになる。
羨望が込められた魔女という言葉の意味に侮蔑が取
って変わった訳です。羨望と嫉妬は表裏一体で微笑
みは突如として変貌し牙をむいて襲い掛かる。

そんな彼女を見つめ続ける一人の男子生徒。中学卒
業時に告白してフラれた経験を持つ。故にその後の
関係はギクシャクしているが彼女を想う気持ちは変
わらない。むしろ強まっているのかもしれない。
孤立した彼女に手を差し伸べるのは勇気のいること
だろう。みんなを敵に回し彼女と同じ目に遭うかも
しれない。しかし高校卒業を間近に控えた彼の決意
は揺るぎないものだった。決して後悔したくない。
失意ともいえる3年間を乗り越え彼女を守れる強い
人になりたい。

高校を卒業に控えピリピリしたり感傷的になったり
する生徒たちのリアルな人間模様。胸が締め付けら
れるとともにキュンとなる作品です。

オムニバス映画の良さって限られた時間で描き切れ
ていない不明な部分を自分で想像、補完するところ
にもあると思います。
それと余韻を残したまま次の作品が始まる。一つの
ドラマが終わり新たな世界へ観る者をいざない次々
と魅了していくのです。
そう、まるで魔女の様に。
やすやす

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