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フォロウィングのRenのレビュー・感想・評価

フォロウィング(1998年製作の映画)
3.5
開始10秒で分かる自主制作感・低予算感。アロノフスキーの『π』を観た時の感覚を思い出した。映画の出来栄え云々よりも、巨匠の原風景を見られた、という意味で体験価値の高い一作。

こんなのに比べたら『メメント』なんてよっぽどルールが明確で親切。ところが今作が超難解映画かと言うと実はそうでもなくて、髪型など容姿の変化が明確に描かれるので時系列自体は追うことができた。細かいところの整合性は微妙に理解が及んでいないけど、何がしたい話なのかは飲み込める。

取り調べで始まる物語。ある人物の述懐がベース。どこかでノーランが「時系列がシャッフルされたもののほうが実際の我々の会話に近い」みたいな発言をしていた記憶がうっすらあるが、その最たる例がこの『フォロウィング』だと思った。「Aが起きて、それはなぜかというと過去にBがあったせいで、というのもCが原因で....」と、我々が会話をするとき、時系列は順方向でないことがほとんどで、そう考えると今作の構成は理にかなっている。この頃から時間にフォーカスを当て、常に同じテーマで作品を作り続けるノーランはやはり巨匠になるべくしてなったのか。

前提として映画に必要なのは豪華な俳優や最高の撮影環境より面白い脚本なのだなと身を持って実感。加えて『パルプ・フィクション』が映画界に与えた影響力の大きさを思い知らされる映画でもあった。

そしてこれはノーラン的『ファイト・クラブ』なのではないかと思ったり。尾行に勤しむ主人公が住居侵入と窃盗にのめり込んでいく。匿名性の高い主人公が犯罪(者)に惹かれダークサイドに堕ちる、という意味で共通していた。コッブはタイラー・ダーデンだったのね。



《⚠️以下、ネタバレ有り⚠️》










コッブとブロンド女性はグル。コッブが住居侵入した際に老女の殺害現場に鉢合わせてしまったため、濡れ衣を回避すべく同じ侵入癖を持つ身代わりを立てようと仕組んだ罠だった。
冷静に考えると、なんだたまたま尾行癖のある男がたまたま侵入癖のある男を追跡していたご都合主義かよと突っ込みたくもなる。が、今作の場合、長編デビュー作かつ自主制作かつ69分の作品なのでそこをイジるよりも全体構造を褒めるべきかなと。
ラスト、雑踏にふっと消えるコッブがかっこいい。カイザー・ソゼかよ。

【追記】エンドロールで、ビルはthe young manと記載されているのにコッブはcobbであるのがちょっと不思議。ビルは偽名だけどコッブは本名?なんとも言えない。
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