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ホドロフスキーのサイコマジックのpherimのレビュー・感想・評価

4.1
 ホドロフスキー独自の行動療法ドキュメンタリーながら、ホドロフスキー過去作群の演出解説でもあるという一粒で二度おいしい系作品。

 「人生に意味はない。人生は生きるものだ。生きろ!」とか、「意味なんかわからなくていい。無意識に働きかける、それがサイコマジック。サイコマジックとは行動だ!」、相談者の睾丸を握って「ここが生気の活力の源だ!」などアレハンドロ翁の咆哮が連発され、まことに胸熱。

 癌転移を繰り返してきた女性が、ホドロフスキー主導で劇場の観客たちからパワーを受けとる「実験」から10年たって語る、「あのあと医者の言葉を超越する力が、自分の内から湧き出てきた」というあたりは、オカルトといえばオカルトだけどオカルトが効いちゃうひとがいるのはまあ事実だろうし、だから人間は面白いななど思う。

 あと、「Fatiguée! Fatiguée! Fatiguée! (人生に疲れた!疲れた!疲れた!) わたし本当に悪いことをすべきだわ。たとえば殺人みたいなことをすれば、自分がすこしはわかる気がする」みたいなところまで追い詰められてる悲観しまくり鬱おばあさんに対して、「人類は銀河の意志なんだ」と銀河視点に立って人類に対する祭司たることを要請するホドロフスキーこらぶっ飛んでるなヤバいわと、このシーンもちょっと感服。

 原色キツすぎ、力あふれすぎで、ホドロフスキー映画は相当元気なときにしか観る気になれず、新作や特集上映時も実はパスすることが少なくなかった。本作を観て、再見も含め過去作を通して観たいと初めて思えたなり。
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