たくみ

ミッドナイト・トラベラーのたくみのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・トラベラー(2019年製作の映画)
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撮影方法がすごい。

(観客にとっての)“非日常”を生きる家族のロードムービーであるからこそ、その“日常”の風景が面白い。楽しい。愛おしい。
夫婦の些細な言い合いや子どもたちの笑顔が、これ以上にない幸福として映る。
しかし映画として面白い(面白がれる立場に自分がいることを意識させられる)からこそ、苦しい。切ない。怖い。
スマホで撮影された緊張感のある映像に、その苦しみを想像し、共有し、体感したはずなのに、それでもスクリーンの先の現実とそれを見ている自分との間には圧倒的な乖離を感じる。

真っ暗な画面に、映画をつくること(映画を愛すること)への監督の葛藤の言葉がナレーションで入る。
何かにカメラを向けるということは、その対象をエンタメとして消費する危険性を孕むということだ。
それでも撮りたいという気持ちと、ただしその葛藤や違和感をないものにはしてしまいたくないという気持ちと、だからいつも撮りたいものは撮りたくなかった。
撮りたくないものは、撮ったらきっと面白いのだろうなとも思った。



...映画に生きたい。
生活や日常や現実を生きるよりも、映画という虚構の中に存在を確かめていたい。

暴力に屈して絶望するくらいなら、戦争すら愛おしんでしまいたい。
地獄すら、自分の道にしてしまいたい。

“平和”というものを“戦争”の対義語としてではなく、“平和”そのものとして定義しなおすことはできないだろうか。
たくみ

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