甘口パンダ

SEOBOK/ソボクの甘口パンダのレビュー・感想・評価

SEOBOK/ソボク(2021年製作の映画)
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不死のクローン人間ソボクと、死が影を落とす男ギホン。命に限りがあってもなくても、人間あつかいされないことは、どちらも同じ。

ソボクは、とても“人間らしさ”がある存在だった。
ギホンが過去を後悔して海で泣き崩れたときにそばにいたのはソボク。あのとき波打ち際にソボクが積んだ石の山は、ソボクの人間性だ。願いをかける石塔に見えたし、ギホンの後悔を象徴する海から、ギホンを守る防波堤にも見えた。最後はソボクのお墓のようだった。


ソボク、一度も笑わなかったなぁ。

自分は何のために生きるのか、運命についてをずっと考え続けてきたのに、ギホンと出会いルーツを確かめる旅ですべてを整理して、ひとりで答えと区切りを決めてしまった。鳥籠しか未来はなかったのかなぁ。なかった気がするなぁ。どこで区切りを決めるかは、数少ないソボクの権利だったし。白い小鳥が哀しかったです。というか、何回も見るほどに、ソボクの行動の意味理解が深まるほどに、より悲しくなってくる映画です。

ちなみに、監督さん曰く、本当は過去に苦しんでいるギホンがソボクとの出会いを経て救いを得る話みたいなんだけど、私はボゴミが好きすぎてボゴミに意識がフォーカスした。たぶん映画の見方が歪んだ。笑 
だって、ボゴミとても良かったから😭。ソボクの透明感と揺らぎはボゴミだからこそ、だわ。ちゃんと大人びているけど繊細な、大人の都合で傷ついてる男の子だった。





それにしても、登場人物が自分の心情や社会的な立ち位置などをよく喋る映画でした。不自然なくらいに。死について、生について、人間らしさについて、欲望について。観客は、考えることを意識せざるをえないと思う。


映画のジャンルは、人間ドラマであり、アクションあり、SFでもあり、サスペンスでもあり、スリラーやロードムービーっぽくもあり。戦車みたいな什器が登場するし、後半は『AKIRA』を思い出した。全てのジャンルに当てはまって何かに偏らない、色々と混在する映画。ないのは恋愛要素やミュージカル、スポーツくらいでは?

最近のほうが昔よりこういういくつものジャンルにまたがる映画が多い気がしていたけど、その特徴がこの映画はより強まっている。しかもなぜかひとつひとつが中途半端で薄い。 わざと?

『建築学概論』のイ•ヨンジュ監督。科学技術の発展スピードに倫理観をないがしろにした人間への警鐘があったように、裏テーマとして軽い口当たりの作品が増えた最近の傾向を危惧していたりして。“ファスト映画”という単語を知ったばかりだから、私が安直に影響受けてるだけかもしれないけど。



「人間は本当に臆病で欲張りですね」
甘口パンダ

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