Smoky

アメリカン・ファクトリーのSmokyのレビュー・感想・評価

アメリカン・ファクトリー(2019年製作の映画)
4.0
バラク&ミッシェルのオバマ夫妻の制作会社『ハイヤー・グラウンド・プロダクションズ』(ブラザー&シスターならではの社名!)のドキュメンタリにしてアカデミー賞受賞作。

「No Prejudice」「No Judgment」というジャーナリズムの基本を踏まえ、中立な視点で編集作された良作だと思うけど。捻くれた自分には、90年代に米国がアジアなどの途上国の労働者に対してやっていたことを、そのままやり返されてる印象を受けて興味深い。

そして、本作に出てくる米国労働者こそが、オバマ政権と民主党に嫌気がさしてトランプに投票した層であり(なぜ、皆一様に肥満体なのか?)、穿った見方をするならば、オバマ夫妻は自分たちが負けた(任期満了だから厳密には負けてないんだが…)理由を知りたかったのではないかと。

中国人のマネジメント層をして「米国人は褒められて育つから、皆が超自信家だ。彼等のプライドを擽っていい気分にさせて働かせなければならない」という言葉は大きく外れてはいないと思うが、中国人達が米国人より優れてる前提で話しているところはやっぱり中華思想だよな…と笑える。

そして、本作が提起する本当の問題は、中国と米国との経済や文化摩擦といった狭い枠組みの話(トランプをはじめ右傾化&保護主義の多くはココを問題視しているが…)ではなく『テクノロジーを背景に、世の中の労働生産性が飛躍的に向上したとき、これだけの労働人口は必要なくなる。そのとき人間はどうやって生きていくのか?』という不可避かつ根源的なレベルの話。

そう考えると「自動印鑑ロボット」を開発してまでこの流れに全力で逆走し、無能なオッサン達の雇用を確保しようとする我が国は、別の意味で凄いと思う。
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