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魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.7
今回も前作から引き続き黒騎士事件を縦軸に据えたまま、そこから派生する血の花のエピソードとヴィーのエピソードの2つを連作小説のように語る2章構成。

前作を経てだいぶ愛着が湧いてきたキャラたちの掛け合いがコミカルで面白い!ゴーゴリのスーパーパワーに懐疑的で堅物な警察署長さんは嫌なとこありつつも、曲がったことを嫌う熱い信念が見え隠れしてカッええやん!ってなったし、時折見せるツンデレ具合が可愛い!ゴーゴリのことが大好きな幽霊さんの嫉妬具合もだんだんエスカレートしてきて、相手の女に「ゴーゴリに近づくな!彼は私と結ばれる運命なんだ!」って直談判に行く始末。死んでるのに。

数々の古典的なゴシックホラーから影響を受けたであろう絵画的な美しさが随所に散りばめられているだけでなく、白の衣装を滲み出し染めていく赤、緑の光や赤く光る花の輪郭等、暗い映像の中だからこそ要所要所で現れるビビッドな色彩が印象に残るし映える。そして前作と同様にユーモアも至る所に挟み込まれ、視覚的だけでなく物語的にも暗さの中に映えるようなアクセントが魅力。

そんで何と言っても見どころはクライマックス。別々の場所で起こる黒騎士の襲撃とヴィーの襲撃をカットバックで見せる映像の凄み。ヴィー側は完全に『妖婆 死棺の呪い』のオマージュで、木造の狭い建物の中、白線の結界を引き、襲い来る魔女と無数の死者との攻防を描く。ゴーゴリたちを中心に回転させるカメラ、湖から次々に現れ向かってくる幽霊たち、彼方と此方を隔てる白線の脆弱性。三部作の中間とは思えないほどのクライマックス感にテンション上がった。

そもそも『妖婆 死棺の呪い』は、本作のモチーフとなっているゴーゴリ原作の映画化作品なので、ヴィーパートのやり口に関しては原作通りなんだろうけど、カメラも含めて完全に意識してたから影響は受けてるのだと思う。流石に伝説となっている棺桶サーフィンはなかったけど(笑)

そして同時進行の黒騎士側は、高まる緊張感の中で濃い霧の彼方側から浮かび上がるように現れる不気味さが陶酔してしまうほどに美しく、警備員の銃撃を受け血を吹き出しながらも全く動じずに走り来る姿と縮まる距離から、主人公不在だからこその無慈悲な絶望感が高まっていき、後光に照らし出された影がラスボスとしての圧倒的な凄みを見せつける。

今日3作目も見たんだけど、3作通してめちゃ面白かった。3作目は予想してたような展開になりつつも、そこから二転三転させていき、そこ伏線やったん?て思っちゃうようなところから新たな展開が生まれてきたりで、通して見たからこそな楽しさがあった。しっかりと事件は解決するんだけど、わかりやすいハッピーな大団円ではなく、収まるべきところにキチンと収めていくのが悲しくもあるけど納得せざるを得ない説得力があって良かった。これは普通に続きが見たい!
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