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人生をしまう時間(とき)のkyokoのレビュー・感想・評価

人生をしまう時間(とき)(2019年製作の映画)
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「自宅で人生を終えること」をとりあげたドキュメンタリー。

長年食道癌を専門とする外科医だった小堀鴎一郎医師は、定年後着任した堀ノ内病院で訪問診療医師となった。
森鴎外の孫だからというわけではないが、なんとも粋なお方。女性にもモテモテらしい。「医者と芸者はお座敷がかかったらすぐ行く」などと言いながら、自ら車を運転して各家をまわる姿はとても80歳には見えない。
マザーテレサの「死を待つ人々の家」で見た情景が建設的ではない終末期医療への抵抗を消したと話す、同じ医療チームの堀越洋一医師の優しい眼差しもまた印象的。

2年間2階の自室から出ない妻をひとりで世話をする80代の夫。
介護疲れがピークに達し103歳の母親を施設に送り出す息子。
子宮頸ガンの娘を介護する母。
末期の肺ガンなのに全盲の娘が心配で入院しない父。

壮絶な在宅介護の現場を前に、日々患者と家族の不安を取り除くことに心を尽くす。
基本臨終には立ち合わない。
そして看取った家族に言うのだ。
「よかったね」
家族への労いと自宅で生を終えることのできた患者への最高の祝辞。

そろそろ自分も考えなくてはならない。
向きあう勇気があるのかどうか分からない。
でもこんな風に言ってもらえたらどんなにか幸せだろう。
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