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ザ・プロムのkissenger800のレビュー・感想・評価

ザ・プロム(2020年製作の映画)
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映画は見るけどドラマ見ないマンこと俺、よく考えたらミュージカル疎いマンでもある。それはなぜ。
と考えながら見ていてガチで声が出たのはトレイシー・ウルマンじゃん! ってところでした(次が「いや歌わんのかーい」)(ジェームズ・コーデンお母さん役のひとが、キッチュな珠玉ポップソングを歌っていた故事を指しています)(故事て。1983年……故事だな)。

一応の結論としては、ポップミュージックのアイデンティティを「自由」だと信じ、それをこよなく愛する者にとってたとえば本作で流れるいわゆるミュージカルソングは「定型で/定型がヨシ」って表現にしか思えず、それは曲調がどうであれ、俺が愛する音楽とは似て非なるものなんですよ。そこがとても居心地が悪い。
もちろんニコール・キッドマンのキャラはそこからもうひとひねりしてくるので、好き(はーと)。
ってなるし、ミュージカルだから全部ダメなわけではないものの、などといつも通り面倒な供述をしており以下略。

過日の桜井くん相葉くん結婚報道において、深く考えもせず「ふたりが結婚したのかと思った」って言うひとが多く、その無自覚な攻撃性に同性愛のひとたちが傷ついていることを知るべきでは。
みたいな文章が目に入ったときにも思ったことなんですが、もう一歩進めて問いたいのはLGBTQ+とくくられるなかの「Q+」の部分を君たちはちゃんと理解しているのか。
それこそ「性別を問わず愛するってステキ」というメッセージ止まりだった本作では「性自認がわからない、無性愛である」ひとたちへの目配りは出来ておらず、え、そこ大丈夫なんすか。という感想がありました。
桜井くんと相葉くんが結婚したっていいし、もっと言うなら「結婚という社会の既成概念」から外れた在り方として嵐が存在したっていいわけじゃないですか……ん、俺はなぜ嵐の話をしているのか。

ええと、映画を見て思ったのも、あんまりlove至上主義を最終解みたいに描くとそれはそれで行き止まりの道になるのでは。
愛こそすべて、ってジョン・レノンが歌ったのはもう半世紀前のことですけど、よろしいですか、あれ別にカップルの性愛の話じゃなくて人類愛の話ですからね。
Qだろうと+だろうと、あるいは「平凡なヘテロセクシュアル」であろうと押し付けられれば愛ってウザい、知らんけど。
って最後の部分こそがあの曲のメッセージで、だからあの曲はだらだらと、ふざけながらフェイドアウトするんです。ごめん今俺適当なことを書いた。

なんにせよ、モニタ越しに見るよりは劇場サイズで見てこそだし、そんなこと言ったらライブアクトでこそ真価が発揮される作品だわ。と思いながらもミュージカル疎いマンとしては作品の芯の部分で考えることがあった、というお話でした。

あとは……冒頭から「ブロードウェイふうセット」であってブロードウェイじゃないのはそういうお作法があるのかこういうジャンル・ムービー。
とかエレノア・ルーズヴェルトが無名みたいに言うのはやめろ。
とかインディアナが田舎って歌詞で「あそこでは従兄妹同士が愛し合うのよ(ゲー)」みたいな1行があって、でも字幕には反映されないのは日本向けの気遣いかよ。
とか実話はミシシッピらしいのをわざわざインディアナに移したのは、それまでインディアナ州知事だった前副大統領への抗議の意味もあった、ってのは良い話だな。日本版もその辺の意図を汲むべきなんだけどね。
など、飲んだら語りたくなる要素メモがいっぱい。
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