こたつむり

ブラック・レインのこたつむりのレビュー・感想・評価

ブラック・レイン(1989年製作の映画)
4.1
アメリカと日本が交差した先にある物語。
それは、黒き雨が汚した大地に滲みる男たちの矜持。

今回、ン十年ぶりに再鑑賞しましたが。
いやぁ。これはかなり“渋い”物語ですね。
中学生の頃に「?」と首を傾げたのも当然だと思いました(当時、友人宅で鑑賞したのですが、友人の「面白い」という言葉を理解できなかったのです…今、考えると、彼は大人だったのですね)。

文化の違い。言葉の違い。立場の違い。
全く異なる立ち位置の男たちの根底にあるもの。そこに触れたから、男は男のために立ち上がる―。

いやぁ。渋いですよねえ。
正直なところ、高倉健さんの魅力を十全に引き出した…とは言い難い展開なのですが、健さんでなければ出せない“渋み”が前面に出ていて、その存在感に目を奪われるのです。

そして、その先にいる男。
それは松田優作さんが演じる《佐藤》。
「奴は何がしたいのだ?」なんて解る筈もなく。その漆黒に囚われた狂気には心底背筋が寒くなりました。やはり、生命を削るようにして撮影に臨んでいたのでしょうね。その気迫がヒシヒシと伝わってきましたよ。

また、物語の舞台である“日本”。
赤く染まる街並み。猥雑な市場。暗闇の中で蠢く工場。それはリドリー・スコット監督の中にあるイメージを最大限に表した“異世界”。リアルでファンタジー。ホットでクール。いやはや、なんともスゴイ世界観です。

あと、個人的にはアンディ・ガルシアのファニーな雰囲気が意外でした。こんなにも好男子なキャラクタが似合う俳優さんだったのですね。ぶっちゃけた話、マイケル・ダグラスよりも良い味を出していたと思いましたよ。

まあ、そんなわけで。
確かに荒削りな部分が目立つ作品。
日本を舞台にする必然性も薄いし、ところどころに首を捻る小道具もあります…しかしながら、渋みと狂気と異世界が混ざって作られた本作は“異形”を描いた物語。平穏な日常では生きていけない“哀しみ”に満ちた挽歌なのです。

それにしても、本作鑑賞後は“うどん”が食べたくなりますね。よし、はな○どんに行こう(伏せ字になってない)。
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