Pecco

劇場のPeccoのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
4.0
『歪なダイヤの原石をもらえた感じ』
最終的な感想をひと言で表すならそんな感じです。

観賞直後は形容し難い感情が渦巻いていて気持ちの整理がつかず放心状態だったのですが、会場を出てしばらく散歩している間に『あ、ひとりで観てよかったな。』とふと我に返りました。
というのも観賞中より観賞後の方が泣きそうで、誰かと一緒に観た後に感想言い合うなんてできる気がしなかったのです・・・ 。

観賞中は心を直に握られていて息苦しいような感覚があり、ずっと嫌な汗をかきまくりで眉間にシワを寄せて観ていました。
鬱々とした切ないシーンが多いせいでもありますが、山崎賢人くん演じる超絶メンヘラ男"永田"と松岡茉優さん演じる天真爛漫なダメンズメーカー"沙希"この2人の対比があまりにリアルで演技も真に迫り過ぎていたせいかもしれません。
2人とも好きな役者さんだけに『こんな2人は二度と観たくない!』と心の底から思いました。

永田がモノローグで叙情的に語る場面がちょいちょいあるのですが、表情だけでは伝わりづらい、永田自身のとても根深い深層心理を詩的な部分はありつつも、わかりやすく語ってくれるので感情移入はしやすいです。
まぁそれもまた時に頭を余計悩ます原因だったりもするのですが(笑)

『表現者が表現して食べていくことを完全に諦める瞬間っていつなのだろう?』
そんなことも考えました。

そのタイミングやキッカケは人それぞれなので『諦めずにがんばれよ!』なんて言ってしまいがちですが、それはとても無責任で無神経で残酷な言葉なのかもしれません。
そして、それを愛すべき人に言われることが最も辛いのかもしれません。
僕は終盤で沙希が永田に言う言葉が劇中で最も心に滲みたのですが、それを前向きな言葉として受け入れられるかどうかは人それぞれのような気はしますが、一瞬『あれ?』と引っ掛かりました。

二度と観たくないような気はしますが、きっとまた観てしまいます。
なぜなら、上記の引っ掛かりを解消したいのと、観賞してしばらく経った今は不思議と心が平穏で前向きな感情が沸いてきたためです。
今日、東京の空は霞がかって青空が隙間も見えませんが、天気がよかったらもっと晴れ晴れした気持ちになれたことでしょう。

もちろん一般の方が観てもよいのですが、表現者の方々には是非是非観て欲しい作品でした。
Pecco

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