みん

劇場のみんのネタバレレビュー・内容・結末

劇場(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

身に覚えがあるから感覚としてつらいけれど最後には愛おしい。自分にとってとても大切な映画。

自転車二人乗りして永田が沙希を褒めるとき。後付けってわかってても、言ってなかっただけで本当はそう思ってくれてたんやって信じた。でもだから、なんで今言うのって泣けて仕方ない。神様なんかじゃないのに。
「永くんが変わらないから離れたけど変わったらもっと嫌なんだ。ひとりで焦って変わったのは私の方。だから自分が嫌になる」っていう沙希の葛藤も。
演劇でできることは現実にもなるんだって前置きして、沙希のためにしてやりたいこと羅列して。なんでこんなに簡単なことができなかったんだろうっていう永田の言葉も。
全部が心に刺さりすぎてしんどかった。
ラストの現実から演劇に変わる瞬間、理解してたはずやのに切なさにやられる。永田の苦悩から生まれたあの演劇は間違いなく永田の代表作で、皮肉やけど創作の意味やった。

変わっていく二人をみる覚悟はおおよそできてた。ブロックが4個からまた増えていて、ヒップホップを聴いていた沙希がアイドルを好きになっていて、billion beatsの歌詞が切なく響く。
それぞれの良さがあるんだよって。まだまだ沢山私が気づけなかった変化があるんやろうな。
全編通して又吉小説の視点と言葉選びが秀逸。何気ない会話にも魂を感じる。永田の「沙希ちゃんがいないと俺はだめになってた」、沙希の「永くんがいなかったらもっと早く東京を出てたよ」の対比。典型的な共依存を私は儚くて美しいと感じ正当化するしかない人生を歩んでる。自分に落とし込んで肯定するしかない状況に陥る。
苦しいけどな、いい映画やな。
これからもずっと私の心の中にある。

山﨑賢人、松岡茉優ちゃんに拍手。もはや感謝。そしてその二人の芝居に完全にふりきって撮った行定監督、さすがです。

もう私は完全にダメになりました。
みん

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