苦しかった…。小説を読んだ時は永田の視点から、認められない苦しさや劣等感が伝わっててきたが、映画だと沙希の視点から見た物語のように感じた。
モノローグは永田の視点なんだけど、どうしても常識的な沙希の方に感情移入してしまう。
前半はとにかく永田のクズっぷりにずっとイライラした。沙希の永田に対する甘さにも悶々とさせられた。
後半の自転車に2人乗りするシーンと、何よりラストシーンが良かった。最後まで永田は成功しないし、「その日」の脚本と同じく「男女が別れるだけの話」なのに、胸を打たれる。
「互いに想いあっているのに、互いの人生を思えば別れた方が良いという切なさ」という物語と、「芸術の世界で認められず、劣等感や自分自身と向き合う」という物語。
どちらか単体なら世の中にいくらでもあるが、この作品はそのミックスがうまく成功しているからこそ、ラストにあれだけカタルシスを感じるのだろうか。
自分本位で劣等感の塊の永田だが、その気持ちに共感してしまう部分もあり、2人のどちらの辛さも分かってしんどい。
それにしても改めて松岡茉優の演技力は凄まじいと思った。勝手にふるえてろの時は、あのこじらせ感が最高にハマり役だと思ったが、真逆のこんな素直な役も全く違和感がない。