このレビューはネタバレを含みます
売れない劇作家の永田と、女優になる夢を持って上京したサキとの恋愛物語。
恋愛物語って書くと、キュンとして甘酸っぱい2人の恋愛模様を描いた映画かとイメージするかもしれない。でも、残念ながら全く違う。最初の出会いから付き合った頃までは、確かに甘酸っぱい時期もあった。
しかし、2人は次第にその関係に慣れて、まるで親友のような時を経、さらには離れたくても離れられない共依存関係のドロ沼へと足を突っ込んでゆく。
もし、永田が劇作家として売れて夢を叶えていたら、どうだっただろうと映画を見終わって考えた。ハッピーエンドだっただろうか。2人は結婚しただろうか。別れることはなかっただろうか。
いや、仮に永田が売れても、おそらく別れていただろうな。エゴイスティックな創作者である永田と、過剰なほど相手に気を遣ってしまうサキとでは、どちらにせよ関係はどこかで終わっていただろう。
2人でいると楽しい、でも、どちらかが我慢しないと成立しない組み合わせなわけで。
だけど、だからこそ、どちらが悪いのではない。もう、これは相性としか言いようがない。サキの家に転がりこんで、ヒモのように暮らしていた永田は確かにクソだしクズだけど、物事を笑って誤魔化してハッキリ言わないサキにも問題がある。ラストの方ではサキ自身も、2人が別れることについて永田が悪いわけではないと明言する。
まあ、そうは言っても、この関係性においては9割方、永田が悪いとは思うんだけどね。でも、そんな永田なのに、サキは自分から離れられなくなるほどに永田LOVEなのよ。
恋愛というか、男女の関係って面白いなと思った。何が正解なのかなって。理屈とか合理性ではとても割り切れない、本能的な動物の匂いを、この映画の2人の関係から嗅ぎ取ってしまった。劇中ではキスシーンもセックスシーンも皆無だったにも関わらず。
