あずき

劇場のあずきのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
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吉祥寺アップリンクにて

又吉直樹さんの言葉が好き
「いつまで持つだろうか」

本当にものを作ることと作っているふりをすることは違う
でもその境界線が曖昧になる瞬間がある
全てはただのふりなのかもしれない
自分にははじめから、たった一握りの才能もないのかもしれない

演劇をやっていたとき
いつもそう思っていた

永田が「叶うかもしれないこと」を
沙希に話すシーンで涙が止まらなかった
好きだけど
ただその人に優しくすることが出来なかった
間に合わなかった

自我と世界と
恋と哲学と
全てが混ざりあって
行き場を失って、爆発する
私にとって「劇場」とはそういう場所だ

長回しの自転車のシーン
行定監督の目線が大好きだと思った
沙希も永田も、そのありのままを
失敗も狂気も、精一杯の結果を
まっすぐ美しく映してくれるから

山崎賢人さんの優しい瞳が
永田の苦しみを伝えてくれていた

松岡茉優さんの強くて弱くて
優しくて賢い沙希を
私は演技と思えなかった

沙希ちゃんは東京にいて
笑っていたんだ、確かに

どんなに傷ついても
後悔しなかったんだ
そう思った
あずき

あずき