ぴよまろ

劇場のぴよまろのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
3.0
又吉直樹原作行定勲監督作品。
前衛的すぎる作風と高すぎるプライドによって全く売れない小劇団の作家が、役者を目指して上京してきた女性と出会い恋人となりながら、作家としての才能と恋愛とがある種の共依存関係となり、数年の歳月で変わるものと変わらないものを描いた恋愛作品。

扱っているテーマ自体に革新的なものはないものの、そのテーマの一つである出口の無いモラトリアムを取り巻く表現、直接的なシーンはないのに全編危うさを感じる恋愛表現、主人公永田(山崎賢人)の純度100%のクズ男っぷりながらも才能への葛藤には誰しもが思い当たる節があるキャラクター、ヒロイン沙希役の松岡茉優さんの凄すぎる演技と、いずれも高い完成度な作品でした。観た人の心が抉られるシーンの数々(沙希が壊れていくシーンは観ていて本当に辛い)と、それでもなお、2人の正しくはない恋愛を否定せず、正解がない演劇と重ねているような演出は、なるほどと思わせられました。原作とは少しだけ違うらしいラストの演出が、よく使われるものではありますが、本作のテーマには合っている表現かと思います。

ただ、無限に続く出口の無さで、最初から最後まであまりにも救いが無い(ラストで多少救いをほのめかしてはいますが)のと、モラトリアムの負の面を強調した展開なので、正直好きになれる作品ではなかったです。(この辺りは好き嫌いが分かれるところだと思います。)
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