銀色のファクシミリ

ブラック校則の銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

ブラック校則(2019年製作の映画)
4.3
『#ブラック校則』(2019/日)
劇場にて。「学校を舞台にした青春映画」の2010年代を代表する一作だと思います。安易な反体制賛歌に陥らず、観る者に訴える「本当の気持ち」の発露。それを文字通り繋いでいく登場人物達と主演・佐藤勝利の演技力で導く、優しきクライマックス。本当に良い映画でした。

タイトルは『ブラック校則』ですが、舞台となる学校はカリカチュアされた尖ったものではなく。むしろ本当にありそうな「生徒指導がとても厳しい」学校のそれであり、また捻じ曲がった教育理念ではなく、世間体と風評に囚われているのもリアル。そこに通う平凡な生徒が主人公というのが最後は美しい。

まとめてしまえば「主人公・小野田くん(佐藤勝利)が、地毛証明書が出せずに留年の危機にある町田さん(モトーラ世理奈)のために奔走する」だけの話なんですけど。でもその「理不尽への抗議と挑戦」が、クラスメートに波及し、それぞれの「理不尽への抗議と挑戦」に変えていく。

終盤、小野田くんの激発的な行動に引っ張られるように、それぞれが疎遠な同級生のために利他的な行動をとり、自己肯定につながっていく爽快感。しかし、そこで生まれる「それは彼らが特技があるからでしょ?」というエクスキューズに対する作品からの答えが、特技ひとつも持たない小野田くんのたった一つだけ持っていた「本物」。
彼がそれを自分の中に見つけ、皆もそれを彼の中に見つけたからこそ、信用させ納得させてしまうクライマックス。なによりそのことを自身の演技だけで、聴衆と観客を気づかせてしまう佐藤勝利の演技力の見事さ。

名作『桐島、部活やめるってよ』にもつながる主題を、2019年の今の形で描いた傑作。コメディテイストで苦い雰囲気も緩和しつつ、今を生きる高校生を優しく応援する物語。校庭での個対群の対話が、SNSでのやりとりを擬しているような演出とか、良き部分がまだまだある映画です。感想オシマイ。
(2019年11月17日感想)

2019年下半期映画ベスト・ベスト主演俳優
2019年映画部門別賞
・佐藤勝利/『ブラック校則』
終盤の演説は、校庭の聴衆と映画の観客の両方に受け入れてもらわなければ、映画が成立しないくらい難しい場面。それを自身の演技力でやり遂げた。最優秀新人賞を決めるならこの方です。スゴイ人出て来た。
(2019年12月31日感想)