JunichiOoya

FUNAN フナンのJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

FUNAN フナン(2018年製作の映画)
5.0
私の学生時代は77年からの4年間。
ほぼ「民主カンプチア」=クメール・ルージュ=ポル・ポトの時代と被っている。
さて、私は学生時代に彼の国に何を思ったのか? 遡れば70年の大阪万博。当時中学一年生の私は、会期途中のカンボジア館で急遽外されたシアヌーク(シハヌーク)の肖像写真に何を感じたのか?
あまりに能天気な自身にただただ呆れるしかないな。

扶南(フナン)のアイデンティティに民族の誇りを持つ彼らは同胞100万人以上をこの間に失った。同時にクメールルージュが手にかけた華人、華僑は数十万規模に及ぶ。先日見た『斧は忘れても、木は覚えている』で描かれたマレーシアでの先住民オラン・アスリや華人への殺戮も同時期の出来事だが、日本やソ連がかつて犯した罪は何ら教訓を産まず拡大再生産され今に続いているということ。

映画で描かれるオンカー(クメールルージュ)の差し迫った鬼面のような表情、民主カンプチアの黒い人民服(というのかしら)に赤いマフラーの「記号」は今に至るもカンボジアの人たちには堪らない恐怖を持って迫るものがあるのだろうと、正視するのが随分としんどかった。

事情は重なったのだろうが、こうした映画が年末年始に公開されたのは時の悪戯とは言え素晴らしいことだと思う。
どうか一人でも多くの方に見ていただいて何かのきっかけにしていただければと思う。

フランス資本が中心となって作られた映画なのでクメール語ではなくフランス語で物語が語られるが、ラストに英語の歌が流れるのは何か意味があるんだろうか? それだけは疑問。
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