ミシンそば

列車に乗った男のミシンそばのレビュー・感想・評価

列車に乗った男(2002年製作の映画)
5.0
骨身に染みる、素朴でゆったりしてて、何処までも寂しい、そんな映画。
何ていい映画だ。

元教師としての名声と財産はあれど、話し相手がほぼいなくて映画のような刺激を欲している下ネタ好きの爺マネスキエと、そのマネスキエとひょんなことから交流を深め、最初は辟易しつつ彼の穏やかな生活に感化されて「これも悪くないかな…?」って思えるようになるアウトローのミラン。

この二人の絶妙で、表面には出さないけどお互いに対するリスペクトが見え隠れする関係性、すごく好きです。
今だったら「エモい」って言葉で片付いてしまう、この憧憬にも似たリスペクト、個人的にはそういう言葉で簡単には片づけたくない。
マネスキエがミランに「退路を示す」ほど入れ込んだ理由は、彼とミラン両名の心持ちが自分にも痛いほど分かるから、そりゃそうだよなって思わずにはいられない。

ラストは一見救いがないようにも思えるけど、最近一気読みした「忍者と極道」のあるキャラクターたちが死後に見る「生前よりはマシではあるだろうけど、希望に満ちているとはお世辞にも言えない幻想」にも似たようなものなのかな?と個人的には思った。
解釈のし様はいくらでもあるけど、最初に感じたこの帰結をいつまでも心に留めておきたい。
この映画は、本当に久しぶりにそういう気持ちを呼び覚ましてくれた。