なつ

死霊魂のなつのレビュー・感想・評価

死霊魂(2018年製作の映画)
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ワン・ビン監督、中国の闇を8時間25分で紡ぐ不条理ドキュメンタリー。
作品最後に出てくる監督から彼等に対する悼む言葉、あぁそうだな、その為に495分観てきたんだと合掌した。

再教育収容所と言う名の、“飢餓収容所”から生還した人々の証言、慟哭、遺された家族の痛み…
これを観て聞いた私達は、目撃者、証人になったんだと思う。
無かったことには出来ないんだよ、中国さんよ、事実なんだから。

下記、フライヤーより。
1950年代後半、中国共産党が主導した百家争鳴キャンペーン(自由な発言歓迎!)にのせられ、自由にモノを言ったら、“右派”と呼ばれ、55万人が収容所に送られた。
そこに大飢饉(毛沢東の大飢饉)が重なる。人間の尊厳すらない収容所、凄惨極まりない飢餓によって収容所は地獄と化した。生還率10%、生き延びた人々の証言。

これは長すぎるけど、収容所での様子を知りたいという方は、監督の“無言歌”を観て下さい。(要覚悟)

あまたある死に方で、餓死が最も苦しく悲惨なのではないか…
簡単には死ねないし、こんな所で死んでたまるかて苦しみも深そう。
死が日常にあり、何にも感じなかったって。飢えて、飢えて、飢えて、食べ物のことしか頭に無かったって、どんなに苦しかったことだろう。
生死をわけた境界線は紙一重。

第3部の、3番目に証言した爺さんに涙した。
なんにも悪いことしてないのに…。
国に恨み辛み言わず、こんな過酷なことも“運命”だって。
国からの施しは一切受けず、働いて全て自分で買ったって、ピアノをピカピカに磨き、中国を代表する酒を飲む。
なんの慰めにもならないけど、爺さんの話し相手になりたいと思った。

ワン・ビン監督は、傾聴力がとても優れた方だろう。彼等に寄り添う、その姿勢は見事だった。
なつ

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