なべ

ザ・ハントのなべのレビュー・感想・評価

ザ・ハント(2020年製作の映画)
4.0
 もうテネットと鬼滅以外に映画はやってないのか!ってくらい新作が乏しくて、でもとんかつDJアゲ太郎とかは死んでも観たくなくてたどり着いたのがこのザ・ハント。ポスターの豚とぼくらのブラムハウスってこと以外、何の予備知識もなく、たいして期待もしてなかったけど、これがあなた!すごくおもしろかったんだわ。

 はじまりはよくある理不尽な人間狩りもの。まあ、人間狩りムービーにはハズレが少ないし、ゴアな低俗映画もたまにはいいかと思ってたくらい。
 ところが、主役のムードを醸すイケメン・イケジョが次々に(それはもう惜しげなく)殺されるのを見て、あれ、思ってたのと違う、てか愉快だ!と思い始めた。
 いや、ゴアな低俗映画ってところはその通りなんだけど、なんていうのかな、そう、心意気が違うのだ。
 数多ある人間狩りムービーのなかでも、狩られる側の中にめちゃくちゃ強いのがひとりいたっていうのは一番盛り上がるやつじゃないですか。そこに、毒気が加わるのはちょっと新しい。透明人間を観たときも思ったけど、定番モノに少し新しいエッセンスが加わって新鮮味を感じるあの感じ。
 SNSでありもしない陰謀論に浮かれ騒ぐ貧困層をバカにしつつ、意識高い系の金持ちどもも同じスタンスでコケにしてるのね。トランプ大統領はこの映画を批判して公開中止に追い込んだらしいんだけど、これって彼が好きな映画じゃないかな? 狩られる側がもろトランプ支持者層だからつい脊髄反射しちゃったんだろうけど、リベラル層もちゃんとバカにしてるから。こういう全方位の皮肉目線は公正で楽しい。
 まあ、差別に対して意識的であればあるほど、高慢な正しさや、逆にヘイトに振れてる不寛容さにうんざりせずにはいられない今日この頃だからこそ、こういう双方向にアンチな目線での作品は全力で歓迎したいよね。特にポリコレを自分たちの責務と考えてるディズニーの驕れる幹部たちにはぜひ観てほしいな。

 クライマックス。クリスタルとアシーナの一騎打ちシーンで狩る側の理由が明らかになるんだけど、そこで交わされる会話のくだらないこと。
「やってるし」「やってねーわ」「いや、やってるし」「てかやらせたのおまえらだし」
だぁーーーっっどーでもええわ!子供か!でも好きw 低俗映画らしい悪事の動機には大満足。
 一応、この映画に教訓があるとすれば、貧困層も富裕層も、SNSで得た情報で誰かを断罪するような奴はクズな!ってところか。早速Filmarksでも、トランプがー、リベラルエリートがー、と一説ぶってるレビューを見かけるけど、そんなあなたをコケにした映画だって気づいて言ってるのかな?
 さて、最後に立っているのはクリスタルかアシーナか?劇場はガラガラだから暇つぶしをするならもってこいの作品ですよー!

 最後、プライベートジェットのCAとキャビアをシェアする彼女を見て、プレデターやエイリアンと戦うところを見たいと思ったのはぼくだけ?
なべ

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