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ソー:ラブ&サンダーのmaverickのレビュー・感想・評価

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
4.8
クリス・ヘムズワース主演の『マイティ・ソー 』シリーズ4作目。MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)では29作目となる。


監督であるタイカ・ワイティティ節がさく裂。もう最高だった。コミカルさを基調としつつ、締めるべきところは締めるスタンス。ややふざけすぎな部分はあれど、単純明快で感動を呼ぶ作品性に好感が持てる。ここ最近は難解でダークな方向性のMCUだったが、これぞ初期のMCUらしい明るく楽しいスーパーヒーロー映画なのが嬉しい。ストーリーもシンプルすぎるくらいシンプルで、主人公ソーの物語に従事している。個人的にはMCUはこれくらいのシンプルさを維持してもらいたいなと思う。

『エンドゲーム』でデブっちゃったままのソーだったが、今作でようやく本来の姿を拝める。ロン毛でムキムキマッチョのソーはやっぱりかっこいい。ソー単体の戦闘力は非常に高く、本作でもそれを証明している。ガーディアンズの面々と比較しても強さは秀でており、強大な敵に対してもほぼ互角に渡り合える強さに惚れ惚れする。思えば最初からソーの強さは別格だった。神だもん。ここ最近はイマイチ活躍の場がなかったけれど、そんな不満を払拭する描き方がされていてとても嬉しい。

物語は『エンドゲーム』後。ソーはガーディアンズと宇宙に飛び出し、新生アスガルドを治めるのはヴァルキリー。それぞれどう過ごしているのかを見れるのが楽しい。ここに復活して加わるのが、ソーの元彼女であるジェーン。演じるナタリー・ポートマンも久々のMCU復帰だ。『エンドゲーム』でカメオ的に出演はあったが、こうしてがっつりと物語に関わってくれるのは本当に嬉しい。しかも新生マイティ・ソーとしての復活である。粉々になったムジョルニアを携え、戦士としての勇ましい出で立ちでの登場。ナタリー・ポートマンは8カ月の厳しいトレーニングを経て同役に臨んだ。あの可愛らしく美しい彼女が、二の腕がっちりになっているのが凄い。ジェーンがソーになっている流れは最初こそ無理矢理感があるのだが、それを納得させてしまう存在感が彼女にある。Wソーという豪華な絵面は本作の大きな魅力だ。

ジェーンの登場も含め、序盤は何だか雑さが目立った。MCUのドラマシリーズとは対照的に驚くほどにテンポが速い。これには少々不満だったのだが、それも後半で納得する。全てが雑なのではなく、割くべき部分に時間をしっかり取っているのだ。じっくり見せるところに時間を使っている。そのバランスの良さは観終えた後にこそ感じた。本作の上映時間は119分で、『アントマン&ワスプ』以来の短さと話題になった。前半の構成も含め、もっと長くも出来たはずだがそれをしなかった。これは監督がシンプルさを意識したからこそだと思う。

コミカルさとシリアスさのバランスも上手い。ワイティティ監督は前作の『バトルロイヤル』からの抜擢で、コミカルさに関しては前作と同等だ。だが本作はそれよりシリアスさも加味されており、それによる明暗のはっきりした部分で前作より出来が良かったと感じる。『エンドゲーム』を経て、ソーの身に起きたこと。そしてジェーンとの再会。それらが本作に深みをもたらしている。ソーが人間として成長した部分にぐっとくる場面がいくつもあった。コミカルさが少しばかりやり過ぎなのは、前作よりも重めな設定とのバランスを保つためだろう。それは本作で初登場のヴィランに関してもそうだ。

本作でヴィランを演じるのは名優クリスチャン・ベイル。彼が演じるゴアの存在そのものが、何よりのシリアス要素である。元々は絶対的に神を信じていたゴア。だが愛娘の死に対して神がとった対応に、その信仰心は怒りへと変わる。この設定もそうだが、クリスチャン・ベイルが演じることに関してコミカルさは連想出来ない。もしもワイティティ監督が、彼にふざけた演技を要求していたらどうしようと不安もあったが、それは杞憂だった。全体的なふざけたノリの本作の中で、クリスチャン・ベイルのゴアはシリアスさという点で見事なバランスを取っていた。彼が演じるゴアはぞっとする怖さがある。その怖さにおいてはサノス以上だと感じた。悲劇の上に成り立っているキャラである。その悲しみと怒りを表したクリスチャン・ベイルの圧倒的な存在感。彼がMCUに参戦するというのは大変な驚きであったが、期待以上の素晴らしい働きぶりを見せてくれた。ワイティティ監督の手腕も見事だ。

シンプルな作品性ではあるが、その中で大きく変化する出来事となっている。MCUはどんどん続いてゆく話だが、そこには衝撃的な出来事も数多くある。続編が観れる喜びと共に、我々はそれを直視して受け入れなければならない。だがMCUには愛がある。どんな悲劇的な出来事も、それを納得した上で受け入れられるような作品作りがされている。本作もまさにそうだった。観終えた後に、さらなる希望が持てるようになっている。「エンドロールまで席を立たないで」には、そういう意味もあるのだ。わくわくが止まらないね。

ヴァルキリーの活躍も嬉しかった。好きなキャラなので。ゴアの娘を演じた子役は、クリス・ヘムズワースの実の娘のインディアちゃん。すでに貫禄あってびっくりだった。カメオ出演の面々も非常に豪華。恒例のあの人には大笑い。スタン・リー的ポジションだったなぁ。

メタラー歓喜の曲の数々。ガンズ・アンド・ローゼズを筆頭に、劇場でヘドバンしそうになったよ🤘 エンドロールも最高!!


それにしても単独映画の4作目は凄い。ソーの人気は天井知らず。クリス・ヘムズワースの続投には感謝しかない。他のキャラが世代交代する中で、ソーだけはずっと変わらないでいてほしいな。『ラブ&サンダー』をこの先も見守っていたい。続編お願いします!!
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