蛇らい

ソー:ラブ&サンダーの蛇らいのレビュー・感想・評価

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
2.2
改めてワイティティの技量の底が知れた一作になった。個人的な趣味趣向の域で語る以前の問題だ。

クリスチャン・ベイル演じるゴアは、存在感と求心力、共にヴィランとしてはこの上なく機能していたが、ワイティティのテンションと不協和音を起こす。ゴアのバックグラウンドや思想に基づいたストーリーテリングが放棄され、核心に迫ることから逃避している。

信仰心や神(ソー自身)の存在意義といったテーマの元、推進するべき物語から逸脱し、ソーが劇中で地に足の着いていないキャラクターに成り下がっている。MCUオタクが主人公の作品で、内省的かつMCU側からの描くべきファンダムの批評的視点が皆無だった『ミズ・マーベル』にも同様のことが言える。

ユーモアはセリフ回し、異質なキャラ造形などの小手先の誇示に留まり、カタルシスに到達できていない。ちびっ子が能力を得て戦闘するシーンでは、ソーのコスチュームになるわけでもなく、ちびっ子が戦うことに意味も見いだせない。ゴアの結末に至ってはプロセスを踏まずに結末に向かう適当さに情けなくなった。

モノクロの惑星で戦闘するシーンは魅力的だし、ベイルの名演も見事であるが、監督のテンションとの噛み合わせでこんなにも台無しになることが許される実情を飲み込めない。監督の映像的な美意識の欠如からくる、ラグナロクでもの横スクロール的なのショットの使い回しや、前作の時期とまったく違う状況になったことを理解せずにアップデートしてこない演出に辟易した。

楽しいだけならもっと質の高い楽しい作品がMCU以外に山ほどあるし、息抜きと言った消極的な評価にあぐらをかくつもりであれば、供給過多に属するであろうMCUに割く時間はもっと限定されてくるだろう。
蛇らい

蛇らい