磯部たくみ

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーの磯部たくみのレビュー・感想・評価

2.4
ブラックパンサー / ワカンダ・フォーエバー観てきました。やはりチャドウィック・ボーズマンのことがあり、話題性は十分でしょうか。

よく「予告編が全てだった」と言われる作品がありますが、本作に限っては「予告編だったら良かったのに...」だったように感じます。予告編での「多様性」や「女性の強さ」・「喪失との向き合い方」、「復活?」といった要素や流れ、そして音楽は非常に圧巻で「要素過多で多分好きじゃないだろうなぁ...」とは思いつつも評価も高く、どこか期待しながら鑑賞させていただきました。

チャドウィック・ボーズマンに引っ張られ過ぎず、チャドウィック・ボーズマンをCGなどで再現しなかったのはとても良かったと思いますし、映像も素敵でした。一つ目のエンドロールもグッドでした。ファッションもスタイリッシュで(コスチュームはひどい)、プライベートウェア?もAdidasやISSEI MIYAKE、Irene Van Herpenなどとても素敵だなぁと思いました。ただ印象的なのはそれくらいで...

もちろん「Marvelだから」や「ヒーロー作品だから」といった偏見はなしに鑑賞しましたし、「喪失感」や「行き場のない怒り」といった要素が現代社会とリンクしている描写を汲み取り、「メッセージ」を受け取ろうともしましたが、「観客をどうさせたいのか」が全く伝わらない作品でした。

本作を端的に申し上げると、所謂映画史における「印象に残るシーン」を想起させるシーンを脈絡も背景整理もなく無機的繋げた、感動も驚きもない作品でした。

全てのシーケンスにおいて緊迫感は皆無であり、「タメもジラシ」も全くなく、普段であれば盛り上がっているシーンも、音楽も映像も何もマッチすることなく、演技だけ「成功だ!」とか「復活だ!」とかセリフとしてだけあり、全く寄り添おうと思えないシーン作りで非常に残念でした。「ワカンダ・フォーエバー」と叫ぶのも違うんじゃないかなぁ。

「シンプルなヒーロー作品」に「BLMや女性の強さ」を描写した前作は、とてもバランスがよく、描きたい内容と伝わる内容が一致していたのかなと思いますが、劇中「なにを見せられているのか...」と約9割方思っていました。唯一カロカンでの回想シーンは引き込まれましたが、シュリが潜水服を着て国を回る時、国民の顔が水中でとても苦しそうで、一瞬で現実に引き戻されたり... 色々詰めが甘く、没入感に欠け、感情移入の全くできない作品で前作は楽しんだだけに非常に残念でした。
磯部たくみ

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