フランス映画初?のトーキー映画として知られる作品。その後に続く、いわゆる詩的リアリスムの源泉ともなった映画でもある。
冒頭、パリの街並みを空から映し、徐々にカメラを下降させ、そこに生活する人々を映し出すロングカットが印象的。
更にそこから主人公らと観衆によるシャンソン歌唱が始まり、これが何とも言えず素晴らしいので、観ていてグッと引き込まれる。
音響設計も考えられていて、カメラが上から下に下がっていくにつれて、最初は小さかった人々の声が、少しずつ大きくなっていくという、なんとも臨場感のあるものに仕上がっている。
世界初のトーキー映画である『ジャズ・シンガー』もそうだったように『歌』から入るのは、当時の人々にとっては、かなり刺激的であっただろう…。
完全なトーキーというわけではなく、ジェスチャーやオーバーリアクションによるサイレント時代の演技・演出も未だ多分に含まれており、サイレントからトーキーへの過渡期の作品として観ると、なかなか興味深い。
ストーリーの方は恋愛+悲喜劇といった感じで、ドラマを見るというよりも、リアルだけれど、どこか現実離れした、この見事なパリの街並みのセット(実景は一つも出てこない。凄い)と、シャンソン歌唱を楽しむべき作品だろう。