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ケイトのsanbonのレビュー・感想・評価

ケイト(2021年製作の映画)
3.2
絶妙に"気持ちよくない"復讐劇。

今作は、暗殺ミッション中に毒を盛られ余命が24時間となった殺し屋が、自分を嵌めた人物に復讐を遂げるまでを描いたバイオレンスアクションである。

ちなみに、フィルマでの評価も低く、エセ日本が舞台となっていることから、雰囲気でつまらないであろう事を半ば確信していた為、ぶっちゃけあんまり観たくはなかったのだが、それでも今作を観た理由はただひとつ。

それは、つい最近ファンになり、半年以上も彼女らの楽曲ばかりをヘビロテしていたくらいにはハマっている「BAND-MAID」がカメオ出演しているからである。

僕は、基本音楽は邦楽しか聴かず、(例外で「イマジン・ドラゴンズ」は好き)尚且つミュージシャンは青田買いを信条として、特定のアーティストに固執せずに若手を中心に手広く聴くようにしているので、日本のミュージックシーンに関しては広く浅く知識があり、中でもまだ世間に完全には見つかっていない原石を探すのが特に好きなので、聴いている曲が一定周期毎に変わるような楽しみ方をしているのだが、そんな自分にとってはまさに異例中の異例と言っていいくらいのハマり具合で聴き漁っていたガールズバンドがBAND-MAIDであり、そんな彼女らの曲が2曲も本編で流れて、本人まで登場するというのなら観ないわけにはいかないというもの。

それ以外にも「Reol」の楽曲がエンディングテーマで使われていたりと、音楽面の嗜好はかなり僕好みの作品とはなっていたのだが、うーん、それにしても中身が無さすぎる。

正直、海外映画における日本が間違いだらけの"トンデモニポン"として描かれてしまうのは、その大半の責任は日本自体にもあると思っている。

何故なら、本作を観ても分かるように、日本が大規模なロケに対してかなり"非協力的"であるのがそもそもの原因だからである。

今作でも、渋谷のスクランブル交差点や新宿の歌舞伎町一番街での撮影は実際に敢行しているのだが、そこでのシーンはただ通り過ぎるだけの動きの少ないものとなっており、少しでもアクション要素のあるシーンになるとたちまち風景が"ニポン化"しているのがよく分かる。

要するに、日本は映画業界においては"鎖国"的な事を未だにやっており、撮りたくても撮らせてくれないんだから代わりとなるセットを作るしかなくなり、どうせセットとして日本を作るなら日本っぽいものを強調し、無秩序に詰め込んじゃえ!という思考回路が働くのは半ば当然の事のように思う。

恐らく日本人も同じ状況に置かれれば、極端な話アメリカ国旗やらハリウッドのあの有名な看板やら、自由の女神など、アメリカにちなんだアメリカが連想されるものをごった煮したような代物が同じように出来上がるだろう。

その上で、外人の中の日本は新宿や渋谷みたいな都心部から一歩外れると、すぐゴールデン街みたいな薄暗くて小汚い裏路地がずっと広がっているもんだと思われているのだから仕方がない。

最近観た映画でも「ワイルドスピード/ジェットブレイク」なんか正にそうだろう。

更には、今作の監督は日本のサブカルと「カワイイ文化」が好きなようなので、そんな人が作ればこんな映像が出来あがるのはなんら不思議ではないというもの。

とはいえ「東京喰種」の映像を高層ビルいっぱいに投影していたりと、でっち上げ具合が知らない人が見たら本当に信じちゃいそうな感じにしているのは、大いに誤解を与えてしまう部分もあったりする為、少しくらいは自重してほしいところではあるが、それは正しい日本を自ら発信もせず、いつまでも発信できないようにしている日本、ひいては各自治体が大概悪い。

なので、今作のトンデモニポンに関しては、そんな事情も汲んだうえで2割くらいはちゃんと描写出来ていた部分もあったので大目に見てあげようと思うのだが、だからといって内容がひどすぎるのは流石に看過は出来ない。

まず、話の大筋に関して"動機としての辻褄"があってないのが非常に気に食わない。

今作は、関東最大の指定暴力団「木嶋組」と、その組長の命を狙う「ケイト」が属する暗殺組織との諍いを発端としたストーリーとなっているのだが、この話のスジ自体がどうも解せないのだ。

何を言いたいかは実際観て貰えばすぐに理解出来ると思うし、ネタバレを避けるためここでの詳細は敢えて避けるが、命を狙う理由も、逆にこれまで生かされていた理由も、あの人物とこの人物が何のために繋がっていたのかも、行動原理がことごとく意味不明で、本当にただヤクザを絡めたバイオレンスをやりたいという思惑でしか動いてないんだろうなというのが手に取るように分かる浅さに、終始モヤモヤしながら観ていた。

そして、今作はおそらく「ジョン・ウィック」シリーズを参考に作られているのだろう事が丸わかりなくらい、ケイトが物語が進むにつれてボロボロになりながら戦い続けるのだが、正直その仕掛けが不快感MAX。

放射性物質を服用させられたことにより、被爆して細胞が壊されていく過程が観ていて結構キツイのだ。

それは、日本が被爆国というのもそうなのだが「東海村JCO臨界事故」で致死量の放射能を浴びた人がどういう末路を辿るのかをよく知っているからであり、どれだけの地獄を味わいながら苦しむ羽目になるのかを理解している分、演技であり演出であろうとすごく嫌な気分にさせられた。

そもそも、外傷を負ってボロボロになるのと、病的にボロボロになっていくのとじゃまるで捉え方が違ってきてしまうのだが、この脚本家はそういう心理をちゃんと加味してこの設定を取り入れたのか甚だ疑問である。

ましてや、今作の主人公は女性である。

どれだけアクションを洗練させようと、申し訳ないが男性俳優が演じるそれとは、ただでさえキレやダイナミックさに歴然の差を感じてしまうというのに、それに加えて内側から壊死していきながら外側も傷だらけになっていく様を取り入れて、動きが鈍くなりながらも勝ち進んでいく様子にはちょっと無理があったし、観てるこっちが辛かった。

こういうジャンルで本来無理ゲーな戦いに挑ませる理由は、ズタボロになりながらそれでも無双していく姿にカッコ良さとカタルシスを見出す為にやるもんだと思うのだが、今作のそれはただただ痛々しいだけというかんじで、その演出を成立させるために、ケイトの衰弱具合に応じて相対的に敵もことごとく弱っちくなる為、観ていても爽快感みたいなものを微塵も感じられなかった。

それに加えて、敵も味方も何の為に戦ってるのかがよく分からないから、本当に絶妙に気持ち良くない映像がずっと続くような印象だった。

ラストカットも、招き猫を模したネオンを見ながら死んでいくって、いや、意味は分かりますよ。

幸福を呼び込む招き猫と、ケイト=キティ(どちらもキャサリンの短縮名で、キティは子猫という意味もある)を掛けて、幸福な死に様だった事を表現したかったんだろうけど、だからってそれを見せられてもなにも感じないのよ。

だって、こっちはケイトに全然感情移入出来てないうえに、その描写が感情を揺さぶるにはあまりに滑稽過ぎるんだもん。

いちいちやりたい事は分かるだけに、アプローチの方法がことごとくダメさを助長させてしまっていたのは非常に勿体ないし、ハリウッドが日本を舞台にした作品は、面白くならないというジンクスがまた立証されてしまったのは残念と言わざるを得なかった。

あと「國村隼」も「浅野忠信」も、出てきてくれるのは嬉しいがあまりにボソボソ喋りすぎ。

日本語で話してるのに字幕欲しいってどういう事だよ。