回想シーンでご飯3杯いける

夕陽のあとの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

夕陽のあと(2019年製作の映画)
4.0
貫地谷しほりは、池脇千鶴と並んで、この世代の中で特に好きな女優さんだ。演じるのが難しい役どころや、犯罪者等、役者としてあまりうま味が無いはずの役にも取り組み、観客を見事に惹きつけてしまう。正に役者魂溢れる人。

この「夕陽のあと」では、育児放棄で逮捕歴を持つ女性役を演じている。しかし、よくあるサイコパス的な人物像ではなく、あくまで普通の女性。ただ、結婚相手と経済状態に恵まれなかった。そのちょっとした歯車の狂いから後悔を抱える事になってしまった女性の姿を、実にナチュラルに演じている。

脇を固める山田真歩と木内みどりも素晴らしい。鹿児島の長島町を舞台に繰り広げられる、3人の女優による正に演技合戦が最大の見どころだ。

エンドロールで10名ほどの主要キャストの名前が流れた後、同じ苗字の役者が5人ぐらいのグループに分かれて数多く流れてくる。もしかして?と思って調べてみた所、本作は地域おこしプロジェクト「長島大陸映画」として製作され、オーディションによって選ばれた200人以上の町民がエキストラで出演しているらしい。5人ぐらいのグループは、つまり家族だったという事。この手作り感覚も本作の魅力と言えるだろう。

「八日目の蟬」に似たストーリーを持つ作品ではあるが、そこまでサスペンス色は強くなく、長島町の風景や地域性、そして特有の子育て文化がしっかりと設定に盛り込まれていて、作品内でとても重要な役割を果たしている。

町の子供達が鳴らす和太鼓をバックにした、台詞の無いラストシーンがあまりに秀逸であった。