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夕陽のあとのギャスのレビュー・感想・評価

夕陽のあと(2019年製作の映画)
3.4
とても真摯に作られていた。

子どもたちや人々の居住まいというか、生活や会話の切り取り方がとても自然。夕日の光景の美しさはさすがタイトル。
泣かせようというあざとさもほとんど感じられず、フラットな状態でそれぞれに立場に感情移入できる。

誰も悪くない。強いて言えば社会が悪い。その被害を被るのは子どもであってはならないのだけは確か。このタイプの育ての親と生みの親問題は、考えても考えても一番結論が出ない問題だ。

つまり思考停止せず、ずっと考え続けること。
そして社会にも関心を持ち続けること。
映画を観た後の、爽やかさ、そして後を引く苦さは、そのことを思い出させてくれる味なのだ。

ネタバレ
秀幸の「母親を二度も奪うつもりか」に全てが込められているような気がした。すでに家族として成り立っているところから、子どもを引き離すことはやはりできない。
そのことを生みの母がどう整理をつけるかをもっと見たかった。
そして、当事者、つまり生みの親から"捨てられたのではない"と後でわかった子どもの生の声を聞きたくなった。きっと想いはそれぞれなのだとは思うが。

一人で生み育てる母親にもう少し余裕があったなら。
DVの問題も、それは男性側の問題提起があって然るべきだと思うのだがなかなか進まない。子どものネグレクトなど、そもそもはそこから始まりがちだから。

あと細かいが、チェロの音楽がすこし寂しすぎるというか、悲痛すぎるような。もう少し柔らかく希望を持てる感じがよかったなぁ。
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